4.姉ちゃんはヒーロー
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リノリでエアトロンボーンの動きをシャカシャカとやった。確かに比叡さんの予想で間違いないのだが、なぜか比叡さんの動きが笑いを誘うのは、本人には黙っておこう。
「でもシュウくんすごいね?。私は楽器なんて全然出来ないよ?」
なぜだろう。気合が入ったものすごく真剣な表情でトライアングルをチンチンと鳴らすシュールな比叡さんを想像して、僕は思わず吹きそうになった。でもそのことも秘密だ。
「まぁそんなわけで、明日弁当が欲しいんだけど、いいかな?」
「いや、テレタビーズの試合だったらあとでバーベキューやるはずよ? 吹奏楽部のみんなも一緒に食べることになると思うけど」
「? そうなの?」
「ええ。そうよねぇ比叡ちゃん?」
その瞬間、比叡さんがビクンと痙攣した。
「べ、別に私は知らないですよ?!!」
何か知ってるな比叡さん……つーかなんで比叡さん?
「もし食べられなかったら連絡ちょうだい」
「うん。分かった」
……あ、てことは明日は比叡さんのお弁当じゃないのか。
翌日、部室前に8時に集合した僕達吹奏楽部員は、眠い目をこすりながら楽器をバスに搬入して球場に移動。到着したらすぐに楽器を搬出して楽器のチューニングと大忙しだった。天気は快晴。太陽もそのやる気を少しぐらい冬に回せばいいのに……と太陽のモチベーションの配分に少々不満を感じた。
「先輩、夏苦手ですもんね」
「セミが出るからね」
「先輩、セミが怖いですもんね」
「怖いんじゃない。あれは人類の脅威だ」
「はいはい」
大体『なんで草野球の試合ごときに僕達吹奏楽部の演奏が必要なんだ』とか、『この時期になんで余計なことを顧問は増やすんだ』といった、部員全員の不満が吹奏楽部ベンチに渦巻いているのが僕には見える。多分、気付いてないのは顧問だけだ。
そうしてしばらく待った後、僕達の地元のチーム“大滝川テレタビーズ”と、隣町のチームにしてテレタビーズの自称ライバル“北ヶ岳チョモランマーズ”の試合が始まった。専攻は我らがテレタビーズ。
「プレイボール!!」
主審の掛け声と同時に試合開始。
「気をつけろよ。始まった途端、いつヒットが出るか分からんからな……」
顧問が僕達に向かって、まるではじめての現場で緊張する新人スナイパーに声をかける、ベテラン特殊部隊員みたいな表情をしてそんなことを言う。クドいようだが、これは草野球の試合だ。
しかし暑い。太陽のモチベーションの高さのせいもあるが、吹奏楽部が陣取ってるベンチは屋根がなくて直射日光にさらされる。一応頭からタオルを被って、体力低下と日焼けを防いではいるが、先程から汗が止まらない。
「先輩、麦茶飲みます?」
秦野がそう言いながら、凍った麦茶が入ったペット
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