3.姉ちゃんは残念……?
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ドジだ。致命的にドジた。料理は出来ないし、ありえないほどにドジ。せっかく顔は整ってるしよく笑って魅力的なのに、こんなに残念な女の人は他に聞いたことがない。
「ゼハー…ゼハー……ごめんねシュウくん……クビになっちゃった……」
「いや……別にいいけど……ゼハー……」
「でも今のままじゃお世話になりっぱなしだし……どうしよう……ゼハー」
そして、比叡さんは真面目で律儀で義理堅い。時々悪夢のような朝食を作るのも、こうやって自分に合いそうもないバイトをやろうとするのも、一重に『うちに世話になりっぱなしだから、少しでも恩を返したい』という気持ちの表れと、焦りから来る行動なのだろうと思う。
「比叡さんは、少なくとも僕には何も悪いことはしてないから、謝らなくていいよ」
「でもシュウくん……」
「比叡さん、今はどうすれば自分が家に帰れるか、それを第一に考えようよ。うちは母さんも父さんも、好きで比叡さんをうちに置いてるんだ。心配することなんか何もないから」
「シュウくん……じーん……」
「焦らずに一歩一歩行こうよ」
「そうだね。私、色々焦ってたみたいだね」
よかった。分かってくれた。明日からは比叡さんも少し落ち着くことだろう。
そのあとは二人でコンビニに入り、パンを買って公園で食べたあと、家に帰った。比叡さんは何か思うところがあったようで、少し考え込んでいたのが気になったが……
「シュウくん、今日は色々ありがとう」
そういう比叡さんの顔はいつものお日様のような笑顔だった。心配することはなさそうだ。明日からは比叡さんも少しは落ち着くことだろう。
次の日の朝、母さん作の朝食を食べながら平和な食事のありがたみを噛みしめる僕の目の前に、突然大きな弁当箱がドスンと置かれた。犯人は比叡さん。
「……比叡さん、これは?」
「シュウくんの今日のお弁当!! 昨日お世話になったからそのお礼に、今日は私が作ったよ!」
「ファッ……?!」
僕は反射的に母さんの顔を見る。今までは、たとえ比叡さんが朝食を作っていても、お弁当は母さんが作っていたのに。
「いやぁ、気にしないでいいのよって言ったんだけど、“今日はどうしても私が作りたいんですッ”て言われちゃうとねぇ」
言われちゃうと……ではない。そこは年長者の威厳で命がけで止めて欲しかったよ母さん……。
父さんを見ると、何やらニヤニヤした顔でこっちを見ている。
「シュウ?……よかったなぁ比叡ちゃんの弁当だなんて。いやぁ〜父さんは羨ましいよ」
嘘つけ。そのニヤニヤは人の不幸をあざ笑っている表情だ。
「ひ、比叡さん、昨日のことは気にしないでいいんだって」
「んーん。昨日のシュウくんの言葉、私にとってとても的確なアドバイスだった。そのお礼がし
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