2部分:第二章
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第二章
「虎や豹を獲物にするスナイパーって実はですね」
「少ないか」
「危ないですから」
それでだというのである。
「こっちが狙われるかも知れない相手を狙うっていうのは」
「殺すか殺されるかは避けたいか」
「はいですから」
「それの何が面白い」
マドールはそこに何の価値も見出してはいなかった。
「戦争ではそんなことも言っていられない」
「向こうも攻撃してきますからね」
「そんな狩りは只のお遊戯だ」
こうまで言い切る彼だった。
「やるからにはだ」
「こちらも狙う相手を撃ってこそですね」
「そうだ、それでこその狩りだ」
その考えをだ。己の口で語った。
「俺はそう思う」
「わかりました。じゃあ御願いしますね」
「豹も虎も撃つ」
彼は言った。断言だった。
「そうするぞ」
こうしてだった。彼はそのテントを拠点として狩りをはじめた。まずは大きな豹を仕留めた。
見れば年老いた雄の豹だった。ガイドはその豹、木から落ちたそれを見てこうマドールに話す。上は緑に覆われ日も見えない。足元は絡まる雑草と倒れた木々がありだ。碌な足場もない。まさにジャングルの中だ。
その中でだ。彼はマドールに話すのだった。
「こいつは。何度もですね」
「人でも食ってきたか」
「あっ、食い殺された人はいません」
幸いにしてそうした犠牲者はいないのだという。
「けれど。賢い奴でしてね」
「それでか」
「はい、多くのスナイパーを出し抜いてきました」
そうした豹だったというのである。
「すばしっこくて。厄介な奴でしたよ」
「その豹を俺が撃ったか」
「凄いですね。こいつに気付かれずに一撃でなんて」
「撃つからには必ず仕留める」
マドールは確かな声で言い切った。
「二発目はない」
「それはないんですか」
「一発撃って外れたらそれで終わりだ」
マドールはその顔を厳しいものにさせていた。そこにあるものはまさに命と命のやり取り、それであった。
「相手が気付いてやり返してくる」
「それを避ける為にですか」
「一発で仕留める」
それでだというのだ。
「そうするのが俺の考えだ」
「そういえば旦那は元は」
「軍人だった」
ガイドにこのことも話した。最初の契約の時にも話しているが今もだった。
「スナイパーだった」
「それで、ですね」
「そうだ。スナイパーの仕事は一撃で仕留めることだ」
まさに一発必中である。それがスナイパーの信条であった。
「だからだ。外しはしない」
「相手が誰であってもですね」
「獣でもな」
同じだというのだった。
「それは同じだ」
「まさにやるかやられるかなんですね」
「一度外せば少なくともだ」
「少なくともとは?」
「その場にいてはならない」
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