1.姉ちゃんは神社にいた
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季節は梅雨時。今日もしとしとと降る雨が朝の登校時からうっとおしかった。一日の授業が終わり、僕はその日所属している吹奏楽部で合奏練習があることを思い出し、足早に荷物をまとめて部室へと急ぐことにした。
それにしても雨がうっとおしい日だった。天気だけでもうっとおしいのに、クラスメイトの岸田が、これまた梅雨の天気に輪をかけたような、どんよりとした顔を一日中していた。一応仲のいい友人だから、心配している風にそれとなく声をかけてみた。
「岸田、今日一日元気なかったけど、なんかあった?」
「ああ……世界が崩壊しかねないほどの大事件がな……」
岸田は、自他ともに認めるオタクと呼ばれている人種だ。こいつの話を聞いていると、僕が聞いたことがないアニメやゲームの話がひっきりなしに出てくる。確か小学生の頃は『おれはフェイトそんに一生を捧げる』と息巻いていたのを、僕はよく覚えている。今はそのフェイトそんとやらの名前をおくびにも出さない辺り、心変わりしたようだった。
「聞いてくれよシュウよぉ〜……」
「泣くなようっとおしい……」
「おれ最近、ネット上でゲームやってるんだけどさぁ〜……」
「またあれ? 女の子が一杯出てくるゲーム?」
「うん。まぁそうなんだけど」
「もう今年で中3だよ? そろそろ卒業しようよそういうのは……」
「黙れリア充!! 吹奏楽なんぞにうつつを抜かし青春を謳歌しやがって!!」
岸田はそう言って、大声で僕を罵倒しながら口の中にたまったつばを飛ばしながら僕を指さした。いや確かに吹奏楽頑張ってるけど、それは部活やってたら誰でも頑張るものじゃん……
「まぁいい。最近“艦これ”ってゲームやってるんだよ……そのゲームでさ……」
正直なところ岸田の話にまったく興味が沸かなかったので気持ち半分で聞いていたのだが、どうも女の子のキャラと化け物が海の上で戦うゲームをやっていて、岸田のキャラの一つが死んだらしい。
「死んでない!! おれは轟沈なんかさせてないんだ!!」
「うーん……まぁよくわかんないけど、元気出せよ……」
「元気なんか出るかよ! 今まで育てた、おれの……おれのッ!!」
ここまで言うと、岸田は再び目に涙をいっぱいに浮かべてまた泣きだした。うっとおしい……ムサい男の涙ほどうっとおしい……
どうもそのゲームは、一度死んでしまったキャラは二度と取り戻せないらしい。キャラが死ぬには条件がいくつかあるらしく、岸田の言葉を信用すれば、岸田は細心の注意を払ってゲームをやっていたにも関わらず、気がついたらそのキャラがいなくなっていたとのことだった。名前は聞いたが、正直印象に残ってない。昔の漫画で同じ名前のキャラがいたような……?
「だったらさ。そのゲーム作ってるとこに連絡でもすりゃいいんじゃないの?
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