2部分:第二章
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第二章
「非常にいいものですね」
「そう思われますか。それでは」
「はい、では約束通り」
「どうぞ」
「有り難うございます」
時計と鎖は紳士のものになりました。そして今度はです。
紳士のお屋敷に入れられてです。一緒に壁にかけられました。今度はそうして壁にかけられたまま屋敷の人達に見られるようになったのです。
そのことにはです。彼等は。
時計がです。彼を壁に吊り下ろしている鎖に対して尋ねるのでした。
「今どんな気持ち?」
「どんなって?」
「コートにかけられてなくて。こうして僕を吊ってるのって。どうかな」
「どうかって言われたら」
「わからない?」
「何か違うね」
まずはこう言った鎖でした。
「コートにつけられてるのと」
「やっぱり違うんだ」
「これも鎖の仕事なんだなって」
こうも言うのでした。
「そう思うね」
「そうなんだ」
「君はどう?」
今度はです。鎖が時計に尋ねました。
「君は今皆に見られてるのって。どう思ってるのかな」
「そうだね。何か違うね」
時計もです。こんな感じで言うのでした。
「ほら、今までは御主人だけが見てたじゃない」
「そうだったね」
「それが今は皆に見られてるからね」
「それが違うよね」
「視線感じるよ、いつもね」
そうだというのです。お屋敷は沢山の人達がいます。その中にいるとです。その沢山の人達が見るのは当然のことでした。
「だから。前みたいにね」
「何かあったら見られるのじゃなくて」
「うん、いつも見られるのがね」
「違うんだね」
「全然違うよ。疲れるかな」
そしてです。時計はこんなことも言いました。
「視線を意識してね」
「疲れるんだ」
「君はどう?いつも僕を吊ってるけれど」
「少し疲れるかな」
鎖もです。それはというのです。
「やっぱりね」
「そうなんだ。疲れるんだ君も」
「何となくだけれど」
「今は疲れるかなあ」
御互いにです。感じているのは同じでした。
こうしてコートにあった時とは違うものを感じていました。そして今度は。
夜中に紳士のお家に泥棒が入ってです。そうして。
何を思ったのかです。時計と鎖を見てです。
「いいな、これ」
鎖と時計を手に取ってでした。それを持ち去ったのです。時計と鎖は今度は泥棒のものになりました。その泥棒はというとです。
泥棒をするだけあってです。いい人ではありませんでした。
泥棒に出ていない時以外はいつも部屋でお酒を飲んで暴れています。そうしてしょっちゅうお家の人と喧嘩を繰り返していました。
時計と鎖はです。盗まれてここに来たことを忘れられてずっと箪笥の中に入れられたままでした。彼等はもう仕事をしていませんでした。
そのことがです。彼等にとっ
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