響ノ章
写真家赤城
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でこうしてればいいの?」
と、その時、響ちゃんが声を上げた。彼女は、後ろから私に抱きつかれている。一寸は恥ずかしいだろうし、長くこの状態でいるのも可哀想だ。
「そうね、直ぐに撮りましょう」
「んじゃ、撮るぞ」
言って二秒程で、シャッターが落ちる音がした。
「よし、じゃあ今日はこれくらいでいいか」
彼は写真機のレンズにカバーをすると、そのまま歩き出した。
まぁ、その、報酬は、消えましたね。はい。
「何でそんなに項垂れてるの、赤城さん」
「なんでもないわ」
決して言えなかった。綿飴が食べられないからって落ち込んでるとか、子供っぽくて言えるわけがなかった。だから、
「どうした。お前が楽しみにしていた綿飴を作りに行くぞ。食わんのか」
彼にこのことを暴露された私は、 吃驚びっくりするほど赤面していることだろう。
「わ、綿飴を頂いてもいいのですか? 銀塩を無駄にしてしまいましたが」
「構わん。頼んだのはこっちだ。あ、響。お前も綿飴食うか。前に皆に作った時は、居なかっただろう?」
話を振られた響ちゃんを見ると、彼女と目が合った。彼女の目は、俗にいう、ジト目、というやつで私を見ていた。
ははーん成る程、白木さんは綿飴に買収されたと。まぁ確かに美味しいとか言ってましたね。みたいな顔をこちらに向けてくる。ヤメテクダサイハズカシイ。
私の顔は、人類がどれ程顔を赤く出来るかに挑戦を続けている。なんとしてでも、この恥ずかしい状況をどうにかしなければならない。そうだ。
「私は遠慮しま」
「響ちゃん、前々から食べたいって言ってたわよね。折角の機会じゃない、ご一緒しましょう!」
彼女の発言を遮って、声を上げた。
響ちゃんも巻き込めばいい。そうすれば、私一人だけが恥ずかしいということはない。
「え。い、嫌ですよ。私は」
「嫌、か。そう思われていたのか、俺は。まぁ、しょうがない点もあるが」
「いえ、嫌というか、その」
「何もしてないのにご馳走になることが嫌なんでしょう? いいじゃない。折角誘って頂いているんだし」
彼女が言いたいことではないことを、全力でまくし立てる。お願い響ちゃん、折れて。
「……わかりました。私もご馳走になります」
その気持ちが、彼女に届いたのか。彼女は、一緒に綿飴を食べてくれることになった。
「…………そう、か。分かった。じゃあ、ついてきてくれ。あと、このことは他言無用だぞ」
何故か生まれた、発言の前の微妙な間が気になったが、そんなことよりも綿飴だ。既に白木さんは歩き始めている。
私は、響ちゃんの手を取った。
「赤城さん?」
「ほら、行きましょう響ちゃん。きっと好きになるわよ。綿飴」
「赤城さんは、大層お気に入りですね。その、綿飴という物を」
「そうよ、とても美味しいもの」
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