アインクラッド 後編
年頃乙女、三人寄れば――
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するんじゃないか、って話なんだけど……」
「だけど?」
難しい顔で話していたことに疑問を持ったのか、エミが不思議そうに首を傾げた。
SAOでインゴットを入手する手段は主に三つ。洞窟や渓谷などに多く存在する採掘エリアでピッケルなどの専用アイテムを使って採掘するか、同じく採掘エリアで採れる鉱石アイテムを幾つか集めて精錬するか、インゴットのドロップするモンスター――ゴーレム系統や、硬い鱗や甲羅を持つ場合が多い――を討伐するかだ。そして三つ目の場合、モンスターの身体、あるいは使う武器などを見ればドロップするインゴットのランクが大体判別できる。だからそのプレイヤーの言うことは理にかなっており、エミが不思議に思うのも無理はない。
リズベットは自分のティーカップを手に取り、赤く色づいたお茶をずずっと啜ってから再び口を開いた。
「証拠が弱すぎるのよ。そのパーティーが公開したアイテムの中には確かに数時間の採掘じゃあ集まらないレベルの高ランク鉱石やインゴットがたっぷりあったから、その後幾つも検証パーティーが組まれたんだけど……結局見つけられたパーティーはなし。ボスがいたって言う部屋はマッピングすらされてなくて、自作自演説まで出始めた頃に五十五層の噂が出回ったから、大体の興味はそっちに移っちゃって、今はもう誰も見向きもしてないのよね」
そこまで話すと、リズベットは口をつぐんだ。手に持ったままのカップをもう一度口に運びながら、「どうする?」と視線でエミに問う。さすがにこの程度の噂話には乗らないかな……というのが率直なところだったのだが、エミはすぐに数度頷くと、
「うん、じゃあ、その洞窟に行ってみる。四十八層で、深夜帯だったよね?」
と迷う様子すら見せずに言ってのけた。そのあまりの即決に、リズベットは肩を揺らして苦笑いをこぼす。
「ちょっと、本気? あたしが言っといて何だけど、何十人も血眼になって探したのに見つからなかったのよ?」
「まあ、最悪ダメ元ってことで。押してダメなら更に押せ! だよ!」
「あはは、エミはほんっと、相変わらずだねー。――あ、やば、もう行かなきゃ。早く研磨お願い!」
「あ、はいはい。ちょっと待ってて」
いっそ清々しいほどのエミの一途っぷりに嘆息していたところを、アスナの声で我に帰った。席を立って回転砥石の前まで移動し、アスナから受け取ったレイピア、固有名《ランベントライト》を研いでいく。特に何事もなく研磨は終了し、透き通るようなクリアシルバーを取り戻したそれを鞘に収めてアスナに投げ返すと、彼女は立ち上がって百コル銀貨を指で弾きながらレイピアを受け取った。
「じゃ、わたし急ぐから、これで」
「わたしも、そろそろお暇しようかな」
ぱたぱたとアスナが逃げるように駆けて行くのを見ながらエミ
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