暁 〜小説投稿サイト〜
八神家の養父切嗣
二十二話:Fate〈運命〉
[8/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
もない」
「それでも…それでも…っ! 友達を見殺しになんてできないッ!」

 フェイトも切嗣の言いたいことは分かっている。
 仮に暴走を起こす前だとしても自分達だけで勝てる見込みは少ない。
 奥の手があることにはあるのだがそれもぶっつけ本番だ。
 彼の意見が正しいのは分かる。だが、納得などできない。
 一向に退く気配の見えない二人に切嗣は無感情に息を吐きクロノの方を見る。

「それなら判断をクロノ・ハラオウンに任せる。凍結魔法は外からの攻撃で壊すことは可能だ」
「クロノ君、お願い!」
「クロノ……ッ」

 なのはとフェイトが期待を込めた眼差しでクロノを見つめる。
 その視線を受けてクロノは自身の手の平を見つめるが封印の解除を行うためには動かない。
 不思議に思い、二人が心配そうな顔で声をかけてくる。

「クロノ…君?」
「選べるはずがないでしょう。余りにも重すぎるんだから」

 そんなクロノに変わりアリアが子供達を諭すように声をかける。
 クロノはその言葉に己の不甲斐無さと力の無さを恥じ入る。
 こういったことも覚悟して執務官になったはずだった。だが、まだ自分は子供だった。

「できるはずがない。たった一人の少女の為に―――六十億の人間を危険にさらすなんてね」

 切嗣の言葉にハッとするなのはとフェイト。
 はやてを助けるということはこの世界の人間全てを危険にさらすということなのだ。
 天秤で測るまでもない。どちらが重いかなんて火を見るよりも明らかである。
 一度でも凍結されてしまった以上、管理局という立場からは凍結の解除はできない。
 例え、封印された少女が何の罪もない者だったとしてもリスクが大きすぎる。

「悔やむことはないよ、クロノ・ハラオウン。こうなった以上、その決断は何よりも正しいものだ。このままいけば世界は救われる」
「そんな理由で納得できるか…ッ。僕はできる限りの人を救いたい。こんな結末じゃあまりにも救いがないじゃないか」
「悲しみの連鎖はね、断つことはできるんだ。でも―――最後に悲しむ人は必ず出てくるんだ」

 憎しみの連鎖や、復讐は多くの人間が言うように著しく愚かな行為だ。
 それは疑いようのない事実だ。だから、人は耐えて連鎖を断とうとする。
 それで連鎖は確かに終わる。耐えた人間が決して報われることなく。
 要するに、殴られた人間は殴り返さなければ殴られたまま終わるのだ。
 
 美徳と、人はそれを讃えるだろう。だが、それは悲しみがなくなったわけではなく。
 誰かが悲しみをそこで堰き止め続けているだけに過ぎないのだ。
 誰もが幸せで笑いあえる未来など、悲しみの連鎖が始まった時点で訪れないことは確定しているのだ。
 
「奇跡でもない限りは誰もが笑いあえる
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ