第一部
第二章 〜幽州戦記〜
四 〜誘(いざな)い〜
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、三人もご苦労だった」
朱儁の陣を辞し、私達は皆の処へ戻った。
「歳三様。皆揃った事ですし、朱儁将軍との話、お聞かせ下さい」
「随分と話も弾んだようですからな。さぞ、上首尾であった事でしょう」
愛紗が、白い眼で私を見る。
「愛紗、焼きもちなのだ?」
「な……。ち、違う!」
「おやおや。朱儁将軍は美しい方だったようでー」
「聞けば、二人きりでのひとときを過ごしたとか。そこで、きっと濃密なやり取りがあったのでは? 如何ですかな、主?」
「……星。見てきたように言うではないか?」
「おや。否定せぬのですかな? もっとも、主はかなり女を泣かせてきたようですがな」
「歳三様と朱儁将軍が二人きり……。どちらからともなく伸ばされる腕……。絡み合う視線……。そして触れ合う肌……。そして、そして……」
む?
稟の様子がおかしい。
「あー。お兄さんも他の人も、ちょっと離れた方がいいですねー」
「どういう意味なのだ、風?」
「すぐにわかる。さ、主も愛紗もこちらへ」
何故か、にやつく星。
「恥じらう朱儁殿。だが、歳三様の魅力に抗しきれず、その手中に抱かれて、身体をまさぐられ……。あまつさえ、鎧を脱いで二人は……ああ、そんな……っ」
「風、星。稟は一体、どうしたのだ?」
「そうだ。離れろとは一体なんだ?」
「そして、乙女の柔肌に、歳三様の手が……。嫌がる朱儁殿の手を払い除け、そしてついに……ああっ!」
盛大に、鼻血を吹き出す稟。
「り、稟?」
「はーい、とんとんしますよー」
落ち着いて、風が稟の首を叩く。
「星! これは一体どういう事だ!」
「落ち着け、愛紗。稟はな、ちと妄想癖があってな」
「妄想癖って、何の事だ?」
鈴々が頬を膨らます。
「……もしかして、先ほどの風と星が私を揶揄した事だけで、ここまで妄想をしたというのか?」
「そうですねー。稟ちゃん、想像力が豊かなのですよ。特に、こうした艶事になるとですね」
「このように、盛大に鼻血を伴う事になるのです。幸い、私も事前に風から聞いていたので、この衣装が朱に染まる事はございませんでしたが」
あの白い衣服では、そもそも戦場で返り血を浴びるのではないか?
いかに得物が槍とは言え、不可思議な事だ。
「はいはーい、稟ちゃん。詰め物しましょうねー」
「ふがふが」
貴重品の筈の紙を、鼻に詰められる稟。
「手慣れているな」
「いつもの事ですしねー」
「いつもの事と言うが、この量は尋常ではないぞ、風? いつか、死に至るぞ」
「いくら風でも、稟ちゃんの病気を治す策は思いつかないのですよ、愛紗ちゃん」
とは言え、いつもこの調子では、愛紗の言う通り、危険だろう。
何か、
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