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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
四 〜誘(いざな)い〜
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いるが」

 蓬莱、か。
 昔話にあった『蓬莱の玉の枝』……恐らくはその蓬莱に違いあるまい。
 朱儁の言う国とは、間違いなく日の本の事であろう。

「徐福の件、私は寡聞にして知りませぬが、恐らくは我が国の事でありましょう」
「そうか。それならば合点が行く。では、先程の二人も貴殿の国の者か? 片方はかなりの腕前、眼鏡をかけた方も切れ者の軍師と見たが?」

 ふむ、賄賂や血縁だけで将になった者とは流石に違うか。

「いえ、どちらもこの大陸の住人。私につき従う事を約定し、義兄弟の杯を交わした仲でござる」
「いや、私の知る限り、官軍にもあれだけの者は数える程でな。それを配下に持つ貴殿もただ者ではないようだ」
「はて、私はさほどの者ではござらぬ。買い被りでございましょう」
「ふふ、そういう事にしておくか。さて、まずは礼を述べねばなるまい。韓忠の首級(しるし)を挙げ、黄巾党討伐の功、少なからず。この事は、必ずや陛下に上奏しよう」
「お言葉、忝なく」
「本来なら、この場にて恩賞を……と言いたいのだが、それもままならぬのが今の官軍の有り様だ。許せ」
「……は」

 どうやら、私の知る人物とは違うようだ。
 少なくとも、信じるに足りる、とは言えるだろう。

「ところで、これから貴殿はどうするのだ?」
「このまま兵を募りつつ、独自に動くつもりにござる」
「ならば、我が軍に加わらぬか? 貴殿ならば、一軍を任せる器量と見た。今の我が軍には、まともに部隊を任せられる将がおらぬのだ。気位ばかり高いくせに腕も頭もからっきし、という輩ばかりでな」

 朱儁は、吐き捨てるように言う。

「それに、我が軍の一員となれば、武器も食糧も回せるし、俸給も考えるぞ。その程度であれば、私の権限でもどうにかなる」

 なかなか、悪くない提案ではある。
 鈴々は勿論だが、愛紗と星も一軍を率いる将としては経験不足が否めない。
 稟と風も、軍師としての資質は疑うまでもないが、机上の学問から抜け出せているかは、まだ未知数。
 それに、一番の問題は兵の錬度。
 つい数日前までは、手に鍬や鋤を手にしていた農民ばかりなのだ。
 戦は、場数が物を言う。
 その点、正規軍は戦闘が生業なだけに、一人一人の強さだけでなく、組織戦になった時に圧倒的な差がある。
 本来負ける筈のなかった幕軍が、政府軍に敗れた原因。
 泰平の世に慣れ過ぎて旗本八万騎が役立たずになっていた事、未だに刀剣中心で、近代戦への切り替えが出来ていなかった事が大きかった。
 だが、今の我が軍と幕府軍とは、事情が異なる。
 ……さて、どうするべきか。



「主。お帰りなさい」
「愛紗ちゃんも稟ちゃんも、お疲れなのですよー」
「お兄ちゃん、特に異常はないのだ」
「うむ
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