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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
四 〜誘(いざな)い〜
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 翌朝。
 稟と愛紗を連れ、朱儁の陣に出向いた。

「止まれ! 何者か!」

 入口にいた兵が、誰何(すいか)する。

「義勇軍指揮官の土方と申す。朱儁将軍にお取り次ぎ願いたい」
「義勇軍だと?」

 (いぶか)しげに、そして僅かに蔑むような眼。

然様(さよう)。貴軍が対峙していた黄巾党について、お話がある……と」
「わかった。そこで待つがよい」

 そう言って、兵士は陣の中へ入っていく。
 その姿が見えなくなったところで、愛紗は憤慨した。

「なんだ、あの態度は」
「愛紗。我らは規模も小さい上、正規軍ではありません。侮られても仕方ないでしょう」
「し、しかしな。我らがご主人様はただの御方ではない。あのような、取るに足りない者にまで蔑まれるとは」
「止せ、愛紗。稟の申す通りだ」

 私の言葉に、愛紗は拳を握りしめながらも、

「……ご主人様の仰せならば」

 どうにか、堪えてくれた。

「待たせたな、朱儁将軍がお会いなさる。くれぐれも、粗相のないようにな」

 どうやら、目通りが叶ったようだ。
 屈辱に肩を震わせる愛紗の肩を、軽く叩いた。
 忠義に篤いのはいいのだが、少々度が過ぎるな。
 一度、改めて諭しておかねばなるまい。
 稟は眼鏡をクイクイと上げるだけ、冷静なものだ。
 と思いきや、小声で私達に囁いた。

「……私とて、無念とは思います。それ故、いかに見返してやろうか、そう考えるまでです」

 どうやら、稟なりに怒っているらしい。
 冷静に見えて、案外激情家なのかも知れぬな。



「私が朱儁だ」

 通された天幕の中央にいたのは、やはり女子(おなご)
 愛紗や稟には劣るが、なかなかの美形だ。
 ……が、共に入った愛紗と稟を見て、少し落ち込んだような表情を見せた。
 視線の先は……胸か。

「初めてお目にかかる。拙者は義勇軍指揮官、土方。こちらは関羽と郭嘉にござる」

 初対面と言う事もあり、こちらが礼を取る。

「うむ。それで、黄巾党の事で話があるそうだな」
「はい。昨日、将軍は奴等と一進一退の攻防をなさっておられた御様子」
「貴様、無礼であろう! 雑軍の分際で!」

 隣にいた、副官らしき男が怒鳴る。

「止せ」
「し、しかし将軍!」
「止せと言っている。それに、この男の言う事は事実だ」

 そして、朱儁は私を見据えて、

「確かにそうだ。今日こそ、奴等を叩かねばならん。今、斥候を出しているところだ」
「その儀なら、無用かと存じます」
「ほう、何故かな?」
「はい。我らが今朝、討ち破りました故」
「何だと、出鱈目を言うな! 貴様らごとき雑軍に、何が出来る!」
「そうだそうだ! 官軍の我らで
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