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チルプイ
第三章

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「だからね」
「それでなのね」
「そう、ザビーネもよ」
 自分と同じ様にというのだ。
「結婚出来てね」
「それでなのね」
「この服を着るわよ」
「エグメも付けて」
「そう、結婚は家と家のものだから」
 だから双方の家長同士が決める、それでアイーダの結婚も決まった。イスラム社会ではよくあることである。
「貴女もよ」
「結婚して」
「十八位になったらね」
 自分の様にというのだ。
「そうなるわよ」
「そうなの」
「だから二年位したら」
「私も」
「その時は私が今着ているね」
「そのチルプイに」
「エグメもネックレスもね」
 そうしたものもというのだ。
「全部着て付けてね」
「結婚するのね」
「そうなるわよ」
「二年後。じゃあそれまでは」
 遥か先を見る顔になってだ、ザビーネは言った。
「私もね」
「そう、そのチルプイを着ていてね」
「その時を待っているわ」
「言われても信じられないけれど」
 そのチルプイを着てエグメ等を付けることはというのだ。
「何時かはなのね」
「二年位でね」
「二年、長いわね」
「そうよね、二年はね」
「二年もあるのね」
「いえ、たった二年ですよ」
 ここでだ、横からアイーダが着るのを手伝っていた女の人が言って来た。
「それは」
「たったですか」
「たった二年ですか」
「はい、そうですよ」
 ザビーネだけでなくアイーダも驚いて問うたがその人は笑ってこうも言った。
「たった二年ですよ」
「あの、二年なんて」
 それこそとだ、ザビーネは言った。
「とてもです」
「長いっていうのね」
「はい、そうですけれど」
「皆さんそう言われるんですよ」
「私だけでないですか」
「そうです」
 とてもというのだ。
「それは」
「そうなんですか」
「人生はあっという間ですから」
「二年はですか」
「それこそあっという間ですよ」
「それで私もですか」
「二年位はです」
 それこそというのだ。
「瞬きする位ですよ」
「そうなんですか」
「特に結婚してからは」
 女の人は笑顔のままでだ、ザビーネだけでなくアイーダにも言った。
「凄く早いですよ」
「結婚してからは」
「特にですか」
「はい、私がそうですから」
 結婚してからというのだ。
「あっという間にですよ」
「時間が過ぎていくんですか」
「そうなりますか」
「はい、それにです」
 さらにというのだった。
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