第二章
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「その服着るわね」
「結婚する時は」
「お姉ちゃんもよね」
「勿論よ、それはずっと先だけれど」
それでもというのだ。
「そうしたチルプイを着る時を楽しみにしていましょう」
「是非ね」
こうしたことを話してだ、そしてだった。
ザビーネはそのチルプイを着る時を楽しみにしながら育っていった、その中で。
色々な色のチルプイを着ていった、そして。
彼女が十六になった時にだ、姉のアイーダがだ。
結婚することになった、それでだ。
紅のチルプイ、金色と黒、白で実に見事なまでに刺繍が入れられた服を着ていてだった。そのうえで首から様々な宝石を着けたネックレスをかけて。
頭にはだ、金に紅の宝玉をはめ込んだ額飾りがあった。それは。
「これはエグメっていうらしいわ」
「エグメ?」
「そう、エグメよ」
それだというのだ。
「紅玉髄を入れてるのよ」
「それがその紅い宝石の名前ね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「五つあるでしょ」
「ええ」
「この五つの宝石は血でね」
その色だというのだ。
「怪我とかから花嫁を守ってくれるの」
「お護りなのね」
「それで私達ムスリムが守らないといけないね」
さらに言うのだった。
「五つの決まりも表してるの」
「そうした意味もあるのね」
「邪眼とかからも護ってくれるし」
「凄い宝石なのね」
「そうなの」
「じゃあお姉ちゃんはそれを付けて」
「このチルプイを着てね」
そのうえでというのだ。
「結婚するのよ」
「そうなのね」
「そして幸せになるわ」
満面の笑顔でだ、妹に言った。
「そしてね」
「ええ、私もよね」
「ザビーネが結婚する時はね」
まさにその時はというのだ。
「貴女もよ」
「私もそのチルプイを着て」
「そしてなの」
そのうえでというのだ。
「ネックレスも付けてね」
「エグメもよね」
「着けてね」
「結婚するのね」
そうだというのだ。
「そうなるのね」
「そうよ、だからね」
「私もその姿になるから」
「その時を楽しみしているのよ」
「そうした時が来るかしら」
そう言われるとだ、ザビーネは実感が沸かなくてだ。
それでだ、微妙な顔になってこう言った。
「私に」
「来るわよ、私だってね」
「お姉ちゃんもなの」
「そう思っていたから」
「そのチルプイを着られるかどうか」
「そう思ったから」
こう妹に話すのだった。
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