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真田十勇士
巻ノ二十一 浜松での出会いその一

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                 巻ノ二十一  浜松での出会い
 服部は幸村達が三河の岡崎を発って浜松に向かうと聞いてだった、家臣達にすぐにこう言ったのだった。
「今は暇じゃからな」
「では浜松にですか」
「行かれるおつもりですか」
「これより」
「うむ」
 その通りだとだ、服部は己の屋敷で家臣達に答えた。
「これよりな」
「そうされますか」
「今は戦もしておりませぬし」
「だからですか」
「今は浜松に向かい」
「真田家のご次男殿をですな」
「そのお目で」
「十二神将達から話は聞いた」
 その彼等の報は受けたというのだ。
「そしておおよそはわかったが」
「しかし聞くより見る」
「それが大事だからですな」
「ここはですか」
「棟梁御自ら浜松に向かわれ」
「そして、ですか」
「あの方を御覧になられますか」
「そうされますか」
「そのつもりじゃ」
 まさにという返事だった。
「だから少し駿府を空ける」
「では何かありましたら」
「すぐに浜松までお知らせします」
「頼むぞ、殿にはもうお話してある」
 家康には、というのだ。
「拙者が浜松に行くことはな」
「そしてお許しを得ている」
「そうですな」
「では浜松に行かれても問題はない」
「そうですな」
「そうじゃ」76
 その通りだというのだ。
「そうしてくる」
「畏まりました」
「では留守はお任せ下さい」
「我等に」
「そうさせてもらう、ではすぐに発つ」
 その浜松にというのだ、そしてだった。
 服部は単身浜松に向かった、だがその動きを知っている者はごく僅かだった。
 幸村達は浜松に着いた、その街並みはというと。
「ふむ、岡崎よりな」
「賑やかじゃな」
「人が多い」
「遠江自体もそうじゃな」
「人が多く土地も肥えておってな」
「豊かじゃ」
「遠江は長い間今川家の領地じゃった」
 幸村が遠江についても話す家臣達に答えた。
「安定して治められていたのでな」
「だからですな」
「三河に比べて豊かなのですな」
「そうじゃ。土地は肥えておりしかも産も多い」
 そうしたものもというのだ。
「駿河程ではないがな」
「この国もですか」
「豊かなのですな」
「この様に」
「そういうことじゃ、そしてじゃ」
 幸村はここまで話してだ、微笑みこう言ったのだった。
「この浜松は鰻じゃ」
「おお、鰻ですか」
「それはよいですな」 
 鰻と聞いてだ、家臣達も笑顔になって言った。
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