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私の宝物 超能力
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に、ここで日掛暗子の生い立ちを、少し語らなければならない。

 暗子には幼い三つ子の妹弟がいた。随分と年下の妹弟だが、十年ぶりかに授かった子供に母は喜び、暗子も妹弟が出来て喜んだのだが、それも束の間、一人っ子の暗子を養うだけでも大変だったのに、いっぺんに三人も増えては養う自信を無くした父は、母と暗子と三つ子を捨てて家を出て行方知れずとなった。
 家族を捨てたのも許せないが、父は暗子が産まれた時に酔った勢いで暗子の名前を、ふざけ半分で暗子として出生届けを出した事だ。
そのふざけた名前のせいで暗子は友達に笑われた。しかし簡単に名前を変更出来ず辛い思いをして来た。
その父が家出して母はそのショックからか病にふけ、母に代わり生活を支えて来たのは暗子一人となった。

 暗子の家は東京板橋区にある。その板橋には東京と埼玉の間を流れる荒川がある。その荒川土手の近くにバラック建ての家が日陰家である。平屋で敷地は二十坪程度しかない。
 貧乏過ぎて暗子は高校など行けるゆとりもなく、中学を卒業してすぐ工場で働きながら定時制高校を出た。やはり日陰家は常に貧乏とは縁が切れなかったようだ。それから十年が過ぎて三つ子達も小学生になると家事を手伝ってくれようになった。母も体調を見ながらパートに出て家計を支えて来た。それは暗子が十五歳の時から始まり二十五歳の今日に至る。

 そんな苦労をして来た暗子に、神様は褒美のチケットを当ててくれたのだろうか。
 暗子には夢のようなコンサートのチケットが手に入ったのだ。
 母は(苦労したのだから遠慮しないで行って来なさい)と言ってくれた。
 バラック建てのような小さい家を、暗子はジーパンに上はジャケットを羽織って出かけた。靴だって安物のスニーカーを洗って小奇麗にしただけだ。
 とても二十五才の若い娘がコンサートに出かけるような服装ではないが、それでも今日のコンサートを楽しみに暗子はウキウキして家を出たのだ。
 暗子だって年頃の娘だ。恋もしたいし青春も楽しみたい。ちょっとはお洒落もしたいし、綺麗な洋服だって欲しい。しかし幼い妹弟達だってヨレヨレの洋服を着ている。母だって辛い思いをして病を押して働いている。
 どうして贅沢な事が出来ようか、でも今回はタダで入ったチケットだ。
 妹弟達や母に遠慮しないで楽しんでらっしゃいと言われ、後ろ髪をひかれながらも行く事にした。

 暗子は生まれて初めての贅沢な日になるだろう。この年まで殆んど化粧もした事がない暗子は百円ショップで買った口紅を付け、それで十分と言い聞かせている。お洒落もしたい、だけど鏡を見ると辛くなるから余り見ない事にしている。一体自分が綺麗なのかどうか判断する前に、着飾るような洋服も持っていないせいかも知れない。本当は友人と行けたら楽しいのに、友人と付き合うにも金が要
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