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私の宝物 超能力
私の宝物 超能力
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 第一話

 ここに対照的な二人が遭遇する所から物語は始まる。
 日陰暗子(ひかげくらこ)は生まれた時から貧乏だった。
 名前の通り、日陰家は代々貧乏から抜け出せなくて日陰のように生きて来た。誰が悪い訳でもないが。そんな家に生まれた運命には逆らえない。
 不思議と日陰家は代々病気がちで、働き手の男達は病に臥せる者が多く、もっぱら女性達が生活を支えて来た家系であった。
 その暗子も例外ではなかった。父は病気がちで定職が持てずアルバイトの収入しかない。それでは生活が成り立たない。母もパートに出て働いた。
 だから暗子は小学生の時から家事の手伝いをして家計を助けて来た。
だが、そんな暗子には宝物があった。
 貧乏でも暖かい家族、何故かちょっと先の出来事が分かるのだ。
 つまり予知能力が備わっていた。貧乏でも慎ましく生きて来た暗子へ神様の褒美なのだろうか。
 その予知能力が暗子の宝物だが、ただ実感としてそれが予知能力だという認識を暗子は持っていない。 ただの偶然の出来事と思い込んでいる。だから家族にも、誰にもそんな事は話をした事もない。

 そんな世の中に貧乏な人がいるかと思えば、生まれた時から恵まれた環境で育った人もいる。
 一方こちらの富田幸男は貧乏とは、どう言うものかも知らないし裕福が幸福とも感じていない。今の生活が当たり前だと思って生きている。先祖代々から豪商の家系で育ち、現在は日本でも有数の財閥であり英才教育を受け将来は親の後を継ぐ身分である。幼い頃から側には執事が付き、廻りの世話をしてくれる。
 高級車で送り迎えは当然の事で、出かける時も帰宅する時もメイド達、数人が玄関前に勢ぞろいし、「いってらいしゃませ」「お帰りなさいませ」の生活だ。
 幼稚園から大学まで有名私立校で高校生の頃から経営学を学び、父の後を告ぐ準備は出来ていた。
 勿論欲しい物はなんでも手に入るし、友達だって上流社会の人間ばかりだ。
 幸男の宝物と言われても何が宝物かは、裕福過ぎて分からないし考えた事もない。スポーツは万能で面構えも悪くない。特に気取る事もなく全てが人を惹きつける魅力を兼ね備えていた。

 そんな対照的な二人、日陰暗子と富田幸男が偶然にもコンサート会場で出会ってしまったのだ。
 共に二十五歳だが、そのコンサートのチケットを暗子はカップラーメンの懸賞で偶然にも当たったものだ。
 一方の幸男は今日ライブを開くイベント会社は、富田財閥の子会社にあたる。
だからチケットは好きなだけ自由に手に入れる事が出来る。交際範囲も広く、数人の友人達とライブを観に来たのだ。二人は対照的なチケットの入手方法だった。
 上流社会で生きる人間と、その日、食べる物にも苦労する人間、なんの接点もないそんな二人を暗子の持つ宝物が引き寄せたのだ。二人の出会いを前
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