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至誠一貫
第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十二 〜交州始末〜
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ち所がないと手放しで褒め称えていた」
「そうか。病は気から、とは言うが、実際には疫病の原因を絶てば相当に違う。例えば、土方のいた冀州もそうだった」
「行ったのか、冀州に?」
「ああ。豫州で疫病の気配があると聞いてな。そのついでに、冀州も見ておこうと行ってみたが」
「では、麗羽に会ったのか?」
「いや、俺は袁紹とは面識がない。それに、俺は患者を治すのが仕事だ」
 近況でも聞けるやも知れぬ、と思ったが。
 元皓(田豊)や嵐(沮授)らがいる以上、どうにか務めているのであろう。
「ただ、民の暮らしぶりは悪くないようだな。流石に、エン州には及ばないが」
「華琳か。さもあろう、奴は為政者としても優れている。私など足下にも及ぶまい」
「そうか? 冀州の民は今でも、土方の事を賞賛しているようだが」
「私の場合、あまりにも赴任時がどん底であったまでの事。立て直すのがやっとであった」
「相変わらず自分に厳しい奴だな。だが、他人に評価されるというのは容易い事ではない。少なくとも、俺はそう思うぞ」
「……そうだな。では、素直に受け取っておくとするか」
 私の言葉に、華佗はただ苦笑するばかりであった。
「お兄ちゃん! 愛紗が目を覚ましたのだ!」
 そこに、鈴々が息を切らせながら駆け込んできた。
「思ったよりも早かったな」
「とにかく、様子を見に参る。華佗、良いか?」
「ああ、無論だ」
 華佗は、残った茶を一気に飲み干し、腰を上げた。

「どうだ、気分は?」
「はい。まだ少々、腕に違和感はありますが何とか」
 まだ顔色は優れぬが、加減が良いのは見て取れる。
「華佗。愛紗は大丈夫なのか?」
「ああ。悪い血は全て抜き、毒に侵された箇所も全て取り除いた。その後で氣を送ったから、後は回復を待つだけだ」
「良かったのだ」
 満面の笑顔を見せる鈴々。
「あ、そうだ!」
 と、何やら手提げ袋を漁り、
「お腹空いてないか? 肉まん買ってきたのだ!」
 湯気が立っているそれを、愛紗に差し出した。
「おい、張飛。病人に食べさせる物ではなかろう?」
「にゃ? 肉まんならおやつなのだ、ちょっとぐらいなら平気なのだ」
「あのな。いくら体力を付けるとは言っても、消化に悪い物を用意する奴があるか」
 呆れる華佗。
「ふふっ、華佗殿。鈴々はこういう奴です、言っても無駄ですよ」
「うー、何か馬鹿にされた気がするのだ」
「全く、これではおちおち寝ておれんではないか。仕方ない、食べてやろう」
 だが、いつもの口煩い母親のような口調ではない。
「にゃはは、最初からそう言えばいいのだ」
 鈴々もまた、肉まんを小さく千切って、愛紗の口へと運ぶ。
「どうだ? 美味いか?」
「……ああ、悪くないな。たまには口にしてみるものだな」
「素直じゃない
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