真似事と憧憬と重なりと
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に行くわ。兵の纏めは任せるからね」
訳が分からない、と首を傾げる猪々子。それ以上は詠も語る気が無いらしく、小さな吐息を落としてその場から歩いて行った。
「わっかんねぇなー……。
ま、いいや。とりあえずメシの準備させなきゃ、だな」
ガシガシと頭を掻いてから、彼女は直ぐに思考を切り替える。
悩んでいる時間が勿体ないと、今はせめて目の前にある楽しいことを優先しよう、と。
遠く、動き出した猪々子を見つめながら、詠はぽつりと独り言を呟いた。
「……あんたの部隊、ボクが軍師として付いても勝てないのはね……徐晃隊の想いの強さ、心に持ってる決死の覚悟の大きさの違いよ。
徐晃隊は皆、黒麒麟が戻ってくるまで一度の敗北さえ許さない。それが例え演習であっても部隊として負けちゃったら、“自分達が絶対に戦いたくない相手”に勝てないって証明になっちゃうもん。
自分の主が裏切る可能性を理解して、最悪の場合は自分達の刃で止めを刺そうなんて覚悟……あんた達に持てるわけないでしょ」
続けて、それでも……と一言。
彼女の判断の中には、もう一つ確信したモノがある。嬉しそうな笑みは、猪々子を将として認めている現れだった。
「徐晃隊には勝てないって言っても、あんた達は強くなってるわよ。曹魏五大部隊の次くらいには、ね」
†
食事はつつがなく、彼ららしい楽しい時間で終わりを迎える。
食べた後の片付けをするのは彼らにとって当然のこと、皆で協力して寝る準備に取り掛かるのも見慣れた光景であった。
成都の街から二里ほど離れたこの場所で、野営の陣は最小限の篝火に照らされて朱色が映えていた。
さて寝るか、と彼も陣幕の火を消そうとした時に……人の駆けてくる足音が一つ。
詠や猪々子のモノでは無い。音の重さからして、間違いなく兵士の伝令であった。
「何かあったか?」
「ああ、徐公明を出せって女が二人来たぞ」
幕の外から伝えられる聞きなれた砕けた口調での報告に、彼はすっと目を細めた。
「どんな女だ?」
「銀髪の胸がでっけぇ女と黒髪に白髪が混ざった気の強そうな女だ」
「へぇ……来た時の様子は?」
「とりあえず出せって黒髪がうるさく喚いてたけど銀髪の方が殴って止めてた。会って話がしたい、だってよ」
「そうかい。ありがと」
「おうよ。で、どうする?」
誰が来たのか問いかけて、与えられた情報に浮かぶのは納得の一文字。
芯強きモノの根幹を揺さぶり、無力の泥沼に突き落としたのだ。雛里達からの情報通りならば劉備はいつでも折れない強さを持っていたらしく、今回のことによって部下達に動揺が走るのは分かっていた。
新参者で慕っているモノからすれば苛立ちが
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