真似事と憧憬と重なりと
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おうか……」
若干落ち込んだ彼に対して、ここぞとばかりに猪々子が彼の真似をして茶化した。
「っ……ぶ、文ちゃん、それ徐公明ならぜってぇ言う」
「だろ? アニキっぽかった?」
「くっくっ、悪い顔してるとこがいいな」
「まあ、似てねぇけど」
「えー、せっかくバカ共と一緒に練習したのにー」
「そんなくだらねぇことしてたのかよ……」
「あ! くだらねぇって言ったな!? くだらねぇことだって言うならアニキが誰のモノマネしてたかばらしてもいいよな?」
「さぁて、楽しいお料理でもするかね。疲れて座りこんでるんじゃねぇぞ野郎共! 二十八、四十六、六十五のバカ! お前ら食事当番だろ、他の当番呼んできて手伝え!」
第四の隊長と連隊長の乗っかりに応える猪々子。秋斗さえ巻き込む仲良さげな様子はどこから見ても徐晃隊の一員にしか見えなくて、詠はいつも通りに、バカ共に対するため息を零した。
「ほんと……バカばっか」
さっさと走り去って行った彼の背に微笑みを向けながら。
一寸の間。背が見えなくなると同時に、彼女は猪々子を見上げた。瞳に宿すは知性の輝き、軍師としての詠が其処に居た。
「バカ達の様子を見る限り問題は無かったみたいね」
「ん? ああ、いつも通りの練兵してたぞ」
「そ……分かった。こっちはちょっと予定変更よ。あんたが鍋を所望してくれて助かったわ」
「鍋で?」
「うん。鳳統隊は特殊任務に向かわせるから一緒の時間減っちゃうし。纏まった食事の時間って暫らく出来ないから」
「特殊任務、かぁ。ならしょうがないけど……あいつらと戦えないのやだなぁ」
「へぇ……気に入ってるみたいね」
「うん、強くなりたくて向かって来て、日に日に強くなってくあいつらと戦うの好きなんだ。あたいんとこのバカ共も影響されてるけど、やっぱりあいつら程じゃない」
「なに“当たり前のこと”言ってんのよ。元文醜隊の連中とあいつらを比べても意味ないわ。あいつらは普通の部隊の力量で測れる強さを越えてるんだもん」
首を傾げた。何故疑問に思ったのか自分で気付けなくとも、その言に違和感を覚えた猪々子は正しい。
軍師という生き物は現実的な物差しで物事を測る。力量で測れる強さを越えてるとは、通常の人間の尺度では測れないという思考放棄に等しいのだ。
夕や郭図を見てきたからこそ、彼女は違和感を感じ取った。
「じゃあ詠はあたいや九番隊に足りないモノが分かるのか?」
考えて思い付いたのはそんな質問。語るからには理由が分かるはずだと希望を込めて。
見つめ返してくる瞳は力強く、猪々子は僅かに圧された。
「……人、そして部隊によって強さは違う。あんたはあんたがしたい戦いを突き詰めたらそれだけで強くなれるわよ。
それじゃ、ボクも料理手伝い
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