真似事と憧憬と重なりと
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上位勢と一対多の訓練を行い、猪々子と一騎打ちをして、九番隊や鳳統隊の兵達を操る詠の指揮を盗み、また猪々子と一騎打ちをするくらい。
そんな兵士とあまり関わっていない彼相手で、猪々子は部隊同士の演習に於いて一度も勝てていない。
徐州の墓参りの時から、彼は四番隊や元文醜隊と極力馴染めるように話し掛け、名前を呼びさえしないモノの絆を繋いでいる。元文醜隊に関しては猪々子に倣ってか“アニキ”と呼ばれる始末。
演習をする度に頭の良し悪しが原因とも思うのだが、詠が軍師として着いても猪々子と九番隊は、彼の操る鳳統隊に勝てないのだ。
故に、仲良くなれば強くなるのかなぁ、と漠然と考えてしまうのも詮無きこと。
猪々子が黒麒麟の真似事をしているおかしな現状はそうして出来上がっていた。
毎日を過ごす内に仲良くなった今、別に何も変わらないなと猪々子は感じている。強さについて此処まで頭を悩ませたのは、彼女にとっては初めてかもしれない。
閑話休題。
夕暮れ。今日の訓練も終わり、夕餉の炊き出しを行い始める時間。
一日くらいで帰ってくると思っていた詠と秋斗は未だ帰って来ていない。詮索するつもりはなく、心配すら感じていなかった。
彼への信頼か、はたまた詠への信頼か……実の所、猪々子の心の中ではどちらも否。
第四の部隊長と連隊長が着いて行ったのだから何かが起これば直ぐに連絡があるはず……と、猪々子が信頼しているのは詠と秋斗よりも彼らに対してであった。
自分よりも武力は劣るが、彼らが黒麒麟のことで間違うとは思えなかった。現場の判断をするには時間が掛かる。詠が判断しきるまでに一人が連絡を伝えるだろう。
その為の二人組であり、一番強い二人なのだ。何があろうと命令を遂行する彼らだからこそ、猪々子は信頼から心配を露ほども感じていなかった。
故に、漸く息を整えてむくりと起き上がった猪々子が、視界の遠くに影を見つけた時、胸に湧いたのは安堵ではなく納得。
四人並んで歩いてくる姿は変わらず、待ちくたびれたとばかりに大きなため息を吐き……緩んだ口元、人懐っこい笑みで四人を迎えた。
「おっせーぞアニキ! 詠も、一日くらいで帰ってくるって言ってたのに」
「……悪かったわよ」
「すまん、ちょっと勝手が過ぎたな」
「へへ、素直だから許す。
とりあえずメシ作ってくれよ。こいつらと一緒に鹿肉とかいろいろ獲っておいたからさ、今日は皆で鍋がいい」
「おま……俺に料理しろと?」
「当ったり前だろ!? 自分勝手したならごめんなさいして気持ちを返すって、ガキでもやってることじゃん」
「ぅぐ……」
呆れのため息が宙に溶け、さすがにそこまで言われては彼も言い返すことなど出来ず。
「くく、お前さんらの責任だ、対価は行動で示して貰
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