真似事と憧憬と重なりと
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そんな男達の在り方が、猪々子は好きで好きで仕方ない。
楽しそうに、嬉しそうに笑い掛けて、そのまま空を見上げて一息ついた。
談笑が聴こえる。疲れて身体も動かせない彼らの笑い声が聞こえる。
いい気分だった。彼女は最近、この時間が好きだった。強くなりたいと毎日のように猪々子に挑んでくる男共と、戦った後でこうした平穏な時間を共有するこの時間が。
自分の部隊のバカ共は四番隊の下位に預け、練兵と演習を繰り返しているが……彼女は彼女でこうして自分の目的を果たしている。
大陸でも指折りの強さを持つ徐晃隊と訓練をすること。
徐晃隊と平穏な時間を共有すること。
徐晃隊と一緒にメシを食らい……一人一人の名前を呼ぶこと。
猪々子は黒麒麟のしてきた事を真似ていた。ソレにはなれないと知っていても、辿った道筋をなぞることで見えることがあると思ったから。
聞いた話だ。
戯曲になってもおかしくない一人の男の物語。
兵士となったバカ共が子供の頃に夢見た英雄のような、そんな男の物語。
何が黒麒麟の力になっているのかを解き明かせば、中途半端な自分も強くなれると思った。
ただし、猪々子は黒麒麟になるつもりはなく、演じるつもりもない。
黒麒麟と同じになれば愛しい斗詩を泣かせることになる。あくまで文醜のままで、彼女は黒麒麟の力を取り込みたいのだ。
ただやはり、なぞればなぞる程わけが分からなくなっていく。こんなモノが力になるのかと疑問ばかりが浮かぶ。
兵士達との訓練については、乱戦や精強な兵士に囲まれた時の状況対応という実りはある……が、笑い合い、メシを喰らい、名前を覚える、この三つが分からない。
徐晃隊の者達に聞いてみても『文ちゃんは御大将の強さってもんが何か分かってねぇな』と呆れられ、九番隊だけに構っとけと笑われる始末。
彼ら曰く、徐晃隊九番隊は部隊として完成されている、とのこと。それを崩すのは良くない、とも言っていた。一個大隊として、彼らは文醜隊を認めているのだ。
変に他の部隊の色を付けるよりも、彼女のやりたいことを一番実現させられる部隊にすればいい。それが彼らの言いたいこと。
まあ、説明されても諭されても、お構いなしに黒麒麟の真似事を続けている時点で、彼女は意地を張り続けているわけだが。
彼らはそんな意地っ張りが嫌いではない。自分達よりも隔絶された武力を持っているが、強くなりたいと願うのならそれもまた同志である。
益州の道中でずっと続けてきた今となっては、彼らの方から猪々子に挑みかかっていたりもする。
基本的に、今の秋斗は部隊の訓練に関わらない。練兵は猪々子に任せているし、鳳統隊に至っては調練メニューが決まっているからすることが無い。
猪々子と一騎打ちをして、鳳統隊の
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