この手を伸ばして
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
この野郎。
「ある程度近くに行かないと遠見もできないの。状況が判るまで、あまり物音を立てないで」
「それ、遠見って言うのか?」
「仕方ないでしょう。応用技を幾つ考えたって、実質殆ど無力なのよ。私は」
「確かに。戦う時は邪魔になりそうだ」
「にゃうぅ」
「なんだよ」
不満そうに俺を睨んだって、事実は事実だろうが。
「黙って。次よ」
一歩も動かない内に景色が二転三転してたかと思えば、最後に花弁の嵐が押し寄せて来た。
四方八方見渡す限りのサクラの木。過去にも何度か見たが、これだけ密集してるのは初めてだ。マリアの記憶でもじっくりは見てなかったからな。
なんつーか……うざい。びらびらびらびら落ちまくってんじゃねーよ! 邪魔!
「みゅー……」
「……。」
「「「……。」」」
……なんだよそのジト目。
情緒を理解しろとか言うなよ? 景観の美なんざ知ったこっちゃねーぞ、俺は!
「はぁ」
わざとらしく溜め息を吐くな鬱陶しい!
「ん」
ん? ……上?
離れた子供マリアの左手人差し指が上空を指した。青い空に目を凝らせば、少し縦長な点が二つ。白い雲の間で付いたり離れたりしてる。
あれか。
「この距離なら聞こえないだろ。気配も消してるし」
「一応、音は潜めて。相手はレゾネクトなのよ? 油断しちゃ駄目」
言いながらじぃっと点を見上げる。
……コイツ今、フィレスの様子を遠見してんだよな。俺の目でも精々服の色が判る程度だが……何か腹立つな。
「俺にも見せろ」
「え? ちょ」
棒立ちの子供マリアに口付けて、視界を一部俺に移す。
……なんだありゃ? 手のひら大のカード?
「にゃうっ!」
「ぃでッ!」
ティーのボールみたいな体が突然、横から頭にぶつかってきた。
衝撃が半端無い。一瞬目眩がした。
「その質量で体当たりとか、何考えてんだデブドラ!」
取っ捕まえようとしたら、今度は三精霊が目尻を吊り上げて一斉に俺の耳元で喚き出す。
「アンタこそ聖天女様に何するのよ、この黒焦げ男! 最ッ低!!」
「やっぱり悪魔は破壊とそれしか頭に無いのね! 女の敵よ! この汚物!!」
「聖天女様を汚さないでよ、幼女趣味のケダモノ! 害虫!!」
「ちょっと待てテメェら好き放題抜かすな! 俺は幼女趣味じゃねぇし人間としてのコイツの実年齢は」
「ベゼドラ。煩い。」
ひっ!?
な、なんだ? 子供マリアが急に猛吹雪を背負った?
何か知らんが……滅茶苦茶怖ぇ……ッ!
「はぁ……ベゼドラは空間を繋いで様子を見たかっただけよ。大丈夫。それより、フィレス様に加勢して! レゾネクトを探ってるみたいだけど、このままじゃ危険だわ!」
「にゃっ」
子供マリアに
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ