第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十一 〜神医、再び〜
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の二人。
だが、あの絆の強さは真の姉妹以上のものがあろう。
「では、参るぞ朱里」
「は、はいっ! 宜しくお願いしましゅ!……あう」
ふっ、また噛んだか。
「朱里よ」
「はい……」
「お前はそれだけ諸事に通じ、誰もが認める才を持っている。もう少し、自信を持ったらどうだ?」
「あう……。す、すみません……」
「別に謝れとは申しておらぬ。お前を仲間に迎えて良かったと、今も思っているのだ」
朱里の吐息が、首筋に当たる。
息づかいが、やや荒い気がするが。
「ご主人様」
「何だ」
「私、本当にお役に立てていますか?……率直にお聞かせ下さい」
「申したであろう。お前がいたからこそ、我らもこうしていられるのだ」
「……本当、ですか?」
「偽りは申さぬ。それとも、私が信じられぬか?」
「そ、そんな事ありましぇん!」
「ならば、そのまま受け取れば良い」
「……ありがとうございます、ご主人様」
朱里の手に、力が籠もった。
「……あの」
「何だ?」
「は、はい……。ご主人様に、一つ」
と、その時。
「あ、土方様!」
士燮が、急ぎ足で此方へとやって来た。
「如何致した?」
「はい! 華佗と申す医師、見つかりました」
「真か。ならば直ちに連れて来てくれぬか?」
「もう手配を行いました」
これで、愛紗も助かろう。
「朱里。後は何も心配要らぬ。ゆるりと休むが良かろう」
「……は、はい……」
何故か、気落ちしたような返事だな。
程なく、華佗が姿を見せた。
卑弥呼や貂蝉はおらぬが、恐らく城下で待っているのであろう。
「久しぶりだな、土方」
「うむ。早速だが、愛紗を頼む」
「任せておけ。患者は何処だ?」
「こっちだ」
華佗は少し診察して、
「うむ。毒が内臓を蝕んでいるな」
「助かるか?」
「……とにかく、全力を尽くそう。すまんが、外してくれるか?」
「わかった。何かあれば、外にいる兵士に声をかけるが良い」
「ああ、そうしよう。鈴々、出るぞ」
「大丈夫なのか、お兄ちゃん?」
「華佗の腕ならば私が保証する。この国で、愛紗を救えるのはこの者しかおるまい」
「わかったのだ」
不安げな鈴々だが、私の言葉に頷いてくれた。
「士燮。この通りだ、礼を申す」
頭を下げた私に、士燮は戸惑いの色を隠せぬようだ。
「い、いえ。私はただ、華佗という医師を探し出したまで。頭をお上げ下さい」
「いや。お前が華佗を連れて来なければ、愛紗は手遅れになったやも知れぬのだ」
「……そうですか。では、お礼として受け取りましょう」
「ありがとうなのだ、お姉ちゃん!」
「お、お姉ちゃん?」
「にゃ? だって鈴々から見たら、士燮はお姉ちゃんなのだ」
「お姉ちゃん、お姉ちゃん……」
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