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至誠一貫
第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十一 〜神医、再び〜
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れば……話は別だ」
「そうですわね。私は食事はそもそも頂いていませんし、歳三様方は確か、山吹さんの手料理を召し上がったとか」
「どうやら、間違いなさそうですね。……それから、わからない事はまだあります」
「風が狙われた事だな、稟?」
「はい。仮に黒幕が北にいる方々だとすると、狙うは歳三様の筈です。なのに、風ばかりに狙いを定めたのは間違いありません」
「むー。風は恨みを買うような真似はしてないのですけどねー」
 不機嫌そうに、飴をなめる風。
「とにかく、徹底的に調べよ。相手が誰であろうと、赦す訳にはいかぬ。良いな?」
「御意!」
 皆が、思い思いに調査に出て行く。
「朱里。済まぬが、愛紗の方を引き続き頼むぞ」
「はい。……ただ、解毒薬だけでは厳しいかも知れません」
 愛紗の容態は幾分落ち着いたものの、昏睡状態が続いていた。
 洛陽ならば腕利きの医師も手配できようが、この地ではそこまで望むのは酷であろう。
「やはり、華佗を探し出すより他あるまい」
「華佗さん、ですか?」
「そうだ。五斗米道の医師で、氣を以て治療を行う者だ。稟も、それでかなり体調が良くなった事もある」
「……わかりました。水鏡先生にもお願いしてみます。あの御方は、各地に顔が利きますから」
「頼む。その間、これ以上容態が悪化せぬよう、何とか頑張ってみてくれ」
「御意です」
 朱里は疲れた素振りも見せず、気丈に笑って見せた。

 昼過ぎに、士燮が姿を見せた。
「土方様、宜しいですか?」
「うむ。私も、お前と話がしたいと思っていたところだ」
「では、失礼します」
 私は書簡を脇に寄せ、机越しに士燮と対面した。
「まず、早朝の火災ですが。家屋の全焼が二十軒、半焼が五十二軒でした」
「……死者が出たと聞いたが」
「はい。三名が死亡、数十名が手当を受けている状態です」
 報告する士燮の表情は、硬い。
「関羽様は、未だに意識が戻らないと伺いましたが」
「そうだ。今のところ、朱里の解毒薬で一命は取り留めた。だが、予断を許さぬ状態でもある」
「……そうですか。実はその件で、お知らせしたい事があります」
「聞こう」
「……では。関羽様が受けた毒ですが……。この国には殆ど出回っていない毒草から作られた物でした」
「どういう事だ? 下手人は、異民族だと申すか?」
「いえ。彼らは漢語を正しく話せませんし、肌の色も異なります。ですが、私が調べた限りでは、死体は何れもこの国の人間ばかりでした」
 わからぬな。
 毒は異国の物、だが扱ったのはこの国の者という訳か。
「些か、私にも気になる事がありまして。この一件、私も調査に加えていただけませんか?」
「しかし、既に皆が調査に走り回っているところだ。その上、何を調べると申すか?」
「そ、それは……」
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