第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十一 〜神医、再び〜
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夜が明け、番禺の被害状況が入ってきた。
どうやら、炎を大きく見せて注意を惹き付ける事が目的だったらしく、火勢の割には被害は少なかったようだ。
……とは申せ、死傷者が出ている以上、軽んじる訳にはいかぬ。
庶人への手当は、既に士燮が動いていた。
介入すべきところは見当たらぬ以上、任せるより他にない。
それよりも、黒幕を突き止める事が我らの使命であろう。
「生き残りはなし、か」
「はっ。自ら命を絶った者はおりませぬが、負傷した後に息を引き取った者が多く……無念です」
「申し訳ありませぬ、主。火を付けて廻った者共も、今一歩のところで取り逃がしました」
項垂れる疾風(徐晃)と星。
「やむを得まい。お前達が責めを感じる事はない」
「…………」
「これだけの規模、これだけの手際からすれば、相手も雑魚ではあるまい。寧ろ、油断していたのは私であろう」
「それは違います!」
「まぁまぁ、少し落ち着いたらどうですか、疾風。あなたらしくもない」
「しかしな、稟。歳三殿からこのような事が起こらぬよう、全てをお任せいただいたのは私だぞ?」
「ええ。ですが、起こってしまった事は仕方ありません。それに、いろいろと不審な点が多いのです」
そう言って、稟は愛里(徐庶)と鈴々を見る。
「確かに。普段の私なら、もっと早くに不穏な空気に気づけた筈なんです」
「うー、頭が痛いのだ……。鈴々、こんな事今までなかったのだ」
「……私も、起こされるまで全く目が覚めませんでした。申し訳ありません」
兵らにも糺したが、やはり深い眠りに落ちていた、との答えばかりであった。
「何者かが、城内の皆を眠らせたのは確かなようですね」
「ああ。だが、殿や山吹(糜竺)ら、私は何事もなかった。これはどういう事なのだ?」
「風と愛紗ちゃんはお兄さんと一緒でしたからねー」
ふむ。
眠り薬を嗅がされたという可能性もあるが、それならば何らかの臭いがある筈。
だが、稟や朱里ならともかく、鈴々や愛里までも気付かぬ訳がない。
それに、城内くまなく細工を施すのなら、私を避ける理由はなかろう。
……と、なれば。
「星、疾風。昨夜だが、夕食は何処で取った?」
「は。城下の飯店にて、メンマを肴に一杯やっていましたな」
「私は、調査で城下にいましたから。星とは別の店で済ませました」
「……鈴々、朱里、稟は、城内の食堂だな?」
「勿論なのだ」
朱里と稟も頷いた。
……やはり、そういう事か。
「疾風。手遅れやも知れぬが、昨夜厨房にいた者を至急洗え。恐らく、下手人が紛れ込んでいたのであろう」
「はっ、直ちに!」
「歳三さん、まさか……身元は十分に確かめている筈です」
「その通りだ、山吹。だが、その身元を保証した者も含めて疑わしいとな
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