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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第207話 帰還
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ゆっくりと起き上がった。
「……(誰も、いない。わよね。でも……)」
そう例え、部屋の中にいなくても、キッチン、あるいはユニットバス、ベランダ、狭い1Kのアパートでも、その気にあれば、姿を隠せる場所は沢山有るのだ。そう、今自分がいるベッドの下にだって……。
――怖い。怖いよ……。
貰った、とは言え、実際に受け取ったのはシノンであり、誌乃ではない。その僅かにある隔たりが 押し寄せる恐怖に負けそうになってしまうのだ。
――で、でも……負けない。負けない、よ。
手に灯る僅かな温もりを必死に身体の芯へと込めると、視線をゆっくりと移動させる。
180度の範囲内を確実に見渡した次に、今度はゆっくりと首を振る。部屋の全体、見える範囲を見た後、今度は 足を動かす番だった。
竦み上がりそうな細く、華奢な両脚を懸命に動かし、力を込め、立ち上がる。それと同時に、頭に取り付けられたアミュスフィアも外して、枕の横に置いた。深く、深く深呼吸をした後に、立ち上がってもう一度部屋全体を見渡した。
――何もかも、数時間前にフルダイブしたときのまま。
テーブルの上もそうだ。ダイブ前の体調を万全にしようと、ある程度のカロリーを取り、水分も含み、その残骸が残されている。数時間前の記憶を揺り起こすと、間違いない。誰かが入ってきた様な形跡は、とりあえずは無かった。……勿論、判る範囲での事だが。
その後も、キッチンやユニットバス、それらを足音を立てない様に意識しながら移動、気配を探ったが、やはり妙な音がする様子も、気配も何もなかった。神経が張り詰めている状況で、見逃すとも思えないし、実際に見てみても、そこには何もいなかった。
そして、いよいよキッチンの向こう側にある玄関口にまで移動した。
眼を凝らすと、ドアのロックノブも水平に寝たままなのが見えた。……が、ドアチェーンは あの時に思い出した通り、掛けられていない。誌乃は 限りなく音を絶てず、息をも殺し、玄関へと移動すると、僅かに震える手を必死に動かし、しっかりとチェーンを掛けた。以前の事件があってから、チェーン自体も厳重なモノにしている為、例え 旧式電子錠を突破出来たとしても、簡単な工具等では 切断は出来ない。よしんば チェーンカット専用の治具を使ったとしても、音を立てずにするのは無理があるし、完全に意識が覚醒した今なら、なんとか逃げる事は出来るのだ。
「………ふぅ」
完全にかけ終えたのを確認すると、にじみ出た冷や汗を拭った。
「……警戒してたのが、馬鹿だった、って思える様な……」
誌乃は、思わずそう呟いていた。確かに拍子抜け、とは違うが 本当に何もかもが 数時間前と同じなのだ。あの恐ろしい事件。あの世界の戦いが無ければ、いつもの様
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