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至誠一貫
第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十 〜番禺の死闘〜
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逃してはならん!」
「はいっ!」
「お任せを!」
 私の檄に、二人は矢で応えた。
 逃げ去る曲者は、一人、また一人と射抜かれていく。
「どうやら、お前が首領らしいな」
「!」
 指示を飛ばしていた覆面に、私はにじり寄る。
「お、おのれっ!」
 自暴自棄に剣を向けてくるが、それでは私は斬れぬ。
 剣を弾き飛ばし、返す刀で鳩尾をついた。
「ぐへっ!」
 そのまま、腹を抑えながらその場に崩れ落ちる。
「歳三様!」
「歳三さん!」
 駆け寄ってくる紫苑と山吹。
「紫苑。いつ参った?」
「つい先ほどですわ」
「そうか。……話は後だ、まずは愛紗を手当てせねばなるまい」
 鏃が肘に食い込んでいるようで、出血は少ない。
 だが、愛紗の表情は苦悶に満ちている。
「このままではいかん。すぐに部屋に運ぶぞ、紫苑、山吹、手を貸せ」
「はっ!」
「はい!」

 城下の火災は幸い、被害は最小限に抑えられたらしい。
 医師も程なく見つかり、すぐさま愛紗を診察させた。
「どうだ?」
「はい。鏃は抜きましたが、どうやら矢には毒が塗られていたようです」
 皆は驚くが、私はそんな予感がしていた。
「それで? 命に別状はあるのか?」
「それは何とも申し上げられません……。傷口は消毒しましたが、何分体内の解毒は私では……」
 申し訳なさそうに項垂れる医師。
「山吹。朱理は如何した?」
「はい。姿を見ていませんが、自室かと」
「すぐに連れて参れ。急げ!」
「は、はい!」
 慌てて飛び出していく山吹。
「では、お主の方で手は尽くした、そう理解して良いな?」
「は、はい。お役に立てず、申し訳ございません」
「良い。これは治療代だ、納めよ」
 懐から取り出した銭を見て、頭を振る。
「い、いえ。それをいただく訳には。関羽様の治療も不完全です」
「いや、最善を尽くした者には報いねばならぬ。取っておけ」
「……はい。では、恐れながら」
 銭を受け取った医師は、一礼して退出していく。
 入れ替わりに、山吹が朱里を連れてきた。
 ……いや、背負ってきた、というべきか。
「部屋で熟睡していたところを、叩き起こしました」
「……あ、あの……一体何が……ふぁぁぁ」
 眠そうな朱里。
 だが、今は一刻の猶予もない。
 朱里の様子も気になるが、それは後だ。
「朱里。愛紗が毒を受けた」
「……え。え、ええっ!」
 流石に目が覚めたのだろう。
 山吹の背から下り、愛紗に駆け寄る。
「毒ですか?……では、この傷が?」
「そうだ。矢に毒が塗られていたらしい。解毒が必要なのだが」
「あわわ、わ、わかりましゅた! すぐに調べましゅ!」
 噛んでいる事すら構っておられぬ程、自体は切迫していた。
 風と山吹を伴い、朱理は書
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