第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十 〜番禺の死闘〜
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に、残り全員が風に襲いかかろうとしていた。
「させるかぁぁぁっ!」
青龍偃月刀が閃き、二人の曲者が骸と化す。
だが、連中に怯んだ様子はない。
或いは、死を決しての事か。
今度は、短弓が一斉に風に向けられた。
「そうは参らぬ!」
私も兼定を抜き、斬り込んだ。
手近な奴をまず一人、素早く突き殺す。
幸い、相手は密集している。
乱戦に持ち込めば、この程度の人数に不覚を取るつもりはない。
「くそっ、早くしろ!」
「駄目だ、相手が強過ぎる!」
漸く、敵に焦りが見え始めた。
だが、敵対する者を目の前にして、些かの躊躇いも命取り。
況してや、名のある手練揃いとも思えぬ。
至近距離での乱戦なら、お手の物だ。
一人の足を思い切り踏みつけ、怯んだ隙に首筋を一閃。
「うがっ!」
そして、少し離れた集団に、懐から取り出した唐辛子弾を投げつける。
効果は既に実証済みだ。
「うわっ! 目が、目がっ!」
「目が開けられん!」
「おのれ! 何たる卑怯者!」
一斉に私を罵る曲者ども。
「ほう。火付けに闇討ちは卑怯ではない、と?」
「ええい、黙れ! こうなれば構わん、全員殺ってしまえ!」
その声を合図に、更に相手の人数が増えた。
「射殺せ!」
「応っ!」
「そのようなへなへな矢など、恐れるに足りん!」
青龍偃月刀をまるで水車の如く振り回す愛紗。
「流石は愛紗ちゃんですねー」
「風! 感心してないで、この状況を何とか打開する策でも考えろ!」
「ぐー」
「寝るな!」
……随分と、余裕のある事だ。
しかし、これだけの矢を射かけられるのは流石に厳しい。
一本や二本、切り飛ばし損ねる可能性が……。
「グッ!」
そう思っていた矢先、愛紗が肘に矢を受けてしまう。
「何のこれしき!」
気丈に振る舞う愛紗だが、何やら良からぬ予感がする。
すぐに抜いてやらねばならんが、私に向けても矢は飛んでくる。
……どうすれば良い。
と。
「グハッ!」
「グエッ!」
弓を使っていた者が、バタバタと倒れ始めた。
「な、何事だ!」
突然の事に、動揺する曲者。
その間にも、奴らは確実に数を減らしていく。
「歳三様! お怪我はありませんか!」
「今参ります!」
その声は……紫苑と山吹(糜竺)。
二人の矢は、正確無比そのものである。
よし、今だ。
……愛紗、暫し辛抱せよ。
そう思いながら、残った曲者に斬り込む。
奴らの眼に、初めて恐怖が浮かぶ。
だが、容赦呵責は要らぬ。
兼定を振るい、確実に仕留めていく。
「い、いかん。退け!」
形勢不利を悟ったか、敵は撤退の指示を出す。
が、些か遅きに失したようだな。
「紫苑、山吹! 一人とて
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