巻ノ二十 三河入りその十一
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「決してな」
「そうですか、ではです」
「我等も殿と死ぬ時は同じですから」
「そう誓ったからにはです」
「必ず」
「うむ、御主達もじゃな」
幸村は十人の家臣達の言葉に微笑んで応えた。
「地獄でもじゃな」
「はい、無様な姿なぞ出さず」
「それがし達のままでいます」
「どうせ人は死ぬもの」
「死ねば必ず閻魔の前に出ます」
それならとだ、彼等は幸村に話すのだ。そのことを話しながらも彼等の顔には確かな笑みが浮かんでいる。
「そしてです」
「殿と共にです」
「この天下を歩み」
「地獄においてもです」
「我等は我等のままでおります
「ではな、地獄でも共にいようぞ」
幸村は食べつつ彼等と三河の食事を楽しんだ。それは確かに質素であるが決してまずくはなかった。そして岡崎からだった。
幸村は家臣達と共に宿に一泊してからだった、そのうえで。
宿を出た時にだ、彼等にこう言った。
「次は遠江じゃが」
「東海道を進み」
「そうしてですな」
「遠江に入りますな」
「浜松に行こうぞ」
次に行くのはこの城だというのだ。
「あの城の城下町にな」
「先日まで徳川殿が居城とされていたですな」
「あの城ですな」
「あの城に向かい」
「そしてですな」
「うむ、あの城の町も見ようぞ」
微笑み十人に話した。
「是非な」
「はい、それでは」
「十人で」
「それではですな」
「行きましょうぞ」
「浜松にも」
家臣達も頷いて応えてだ、そしてだった。
彼等はすぐにだった、岡崎を後にしてだった、
浜松に向かった、東海道を下りそうしていくのだった。
巻ノ二十 完
2015・8・18
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