第二十話:拙い反撃
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できなかった。
右手で顔面を掴んで握り、歯を食い縛って震える事しか……できなかった。
「お、落ち着いてよ兄ちゃん! ロザリンド様はラスボス設定だし、奮闘した方だってば! そ、それにマリスたんが……」
「……ああ、分かってる」
分かってはいる。だが、理屈じゃない……この悔しさは、理屈では片付けられない。
初っ端で既に気絶から回復し、ロザリンドからもモロバレな位置で観ていた事も追求せず、俺はマリスの元へと歩みよる。
グッタリしてはいるが意識は当然あり、此方へと気遣うような、それでいて悲しげな瞳を向けてくる。
「……麟、斗……」
「マリス、少しの間我慢しろ」
「……あ……う」
自らの力では未だ立てないマリスを横抱きにして……お姫様だっこの体勢で持ち上げ、奇跡的に今の今になってもまだ誰も駆けつけてこない駐車場を後にすべく、ムトゥーヨガー堂に背を向けると早足で歩き出す。
何時もならば何かしら茶化してきたり、理解すら放棄させる意味不明論理を吐き出す筈の楓子は、俯いたまま置いて行かれぬようにと付いてくるのみ。
「兄ちゃん……」
クソったれ……クソッたれ……!
「……麟斗……」
クソッたれが………!!
「「……」」
俺は真正面を見据えて歩行しながらも、自身の中に沸々とわき上がる感情を整理できずにいる。
誤魔化そうにも誤魔化せないそれを抱いたまま、二日後の決戦という言葉を反芻するしかできずにいたのだった。
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