第二十話:拙い反撃
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「場所が場所だ。これ以上騒動を巻き起こし拡大させると、殺戮の天使のみならず普通の人間である楓子君、そして素晴らしい奮闘を見せた麟斗君にも害が及ぶだろう」
本当にいまさらな発言だが……俺は突っ込みは愚か、揚げ足取りも正論すらも、不用意に告げられず口を開けない。
奇しくも、待ち望んだ状況が目の前にあるからだ。
……例え今心打ちに怒りが煮え滾り、吐きそうなぐらいの苦渋を舐めさせられる気分だったとしても。
「これからの生活に、暗雲を掛けて不幸をもたらしてはいけないね。それに僕のポリシーに反する事まで行使してしまったお詫びだよ……今日の所は此処で一旦退せてもらおうじゃないか」
ポリシーが何かなど聞くまでも無い。
『弱者には手を上げない』という、絶対少女黙示録に書かれた設定を、ロザリンドとして生まれ変わった演劇部の女子高生が、律儀に演じて守っているからだ。
見逃されることは確定した。
が……何故だろうか、胸の中には安堵感が広がらない。
「日取りは二日後だ。場所は―――天王山に公園があったね? 其処で決闘の続きと行こうじゃないか」
「……よく知ってるな」
「ああ、昔遠足で来た事が―――――あっ……ああ、いやなんでも無い、たまたま見たのさ……決闘に相応しき、広く綺麗な広場をね」
普段の俺ならば、明らかに突っ込み待ったなしな台詞であったにもかかわらず……唇は恰もセメダインで止められたみたく頑なに開いてくれようとはしない。
そして俺自身、開く気力もない。
否、違う。
……開ける、訳がねえ。
「フッ……次までに腕を上げ、僕を高揚せしめる実力を手にしておけ、殺戮の天使よ……では、また会おう」
最後にまた気障な仕草で笑い、堕天使の翼は使わずそのまま歩き去って行く。
【天使の羽衣】も纏ってはいない。此方が手を出す可能性すら考えていない、あまりに無防備なその背中。
「……くそ……っ!」
俺には、追撃することなど出来なかった。
ただ立ち尽くして拳を握りしめ、深紅の甲冑姿の女を見送ることしか、できなかった。
「……に、兄ちゃん……?」
珍しく戦闘中に空気を呼んで何も言わず、成り行きを静かに見守っていた楓子が、此処で口を開いて俺に話しかけてくる。
……皮肉の一つでも返してやるか。
俺はそう考えて自慢の馬鹿妹、楓子の方へ目線を傾ける。
「っ! クソがぁ……!」
「ひゃう!?」
またも叫ぶだけで、ほぼ何も言えなかった。
ただ視線を正面に戻し、湧き上がってい来る言い表せないもどかしさを、口から簡素な悪罵へ変えて、愚直に吐き出すことしか
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