第二十話:拙い反撃
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俺の耳へと届く。
くそ……痛ってぇな……アスファルトはよ……!
「ぐ、お……っ!」
二、三回転げたその回転を利用して立ち上がり、ロザリンドと俺自身の拳に、交互に視線を合わせる。
感触自体はそう変わらなかったが、【天使の羽衣】は確かに貫通していた。しかしもしかすると、ダメージそのものはほとんど緩和されてしまっていたのかもしれない。
人間とそう変わらない肉体構造をもつとなれば、尚更その可能性が信憑性を帯びてきてしまう。だが、その事を悟らせなければまだいけるか……?
【皇帝の紅薔薇園】を使わせれば、或いは何でもいい―――【天使の羽衣】さえ失わせれば……マリスがまとまったダメージを与えられる一撃を放てるまで時間稼ぎできれば……或いはいけるのか?
「……ん」
ロザリンドを見れば最初ほどの余裕はないが、それでも充分冷静さを保っているように見える。
……いやそれは誤りだ。
「ふむふむ……もしかすると……」
それ以前の圧倒的優勢だったころの、余裕を取り戻しつつあると言った方がいいかもしれない。
元よりラスボスで高スペックな身体だ……慌てる必要が無いのだから、そう言った状況に陥るのは当たり前と言えるだろう。
いや、そんな事より―――今のセリフは、もしかして気付きやがったのか……?
「君の未知なる拳にも、殺戮の天使の魔力も、吹き飛ばしてしまう―――そんな僕の美しさ、そして強さとは罪な物だね!」
気障ったらしく髪の毛を掻きあげ、ニヤリと歯を見せて笑う余裕までも、取り戻していた。
この台詞が本心で、それまでならまだ望みはつながっている。
どうだ……?
「痛い事は痛かったが……何、脅威となるものではなさそうだね、麟斗君」
「っ!」
間違いない……俺の殴打が、叩撃が、有効打になり得ていない事を既に《見抜かれて》しまっている……っ!
これでアイツは俺の見方を、元の “弱者” の位置まで降格させたに違いない。それでは万が一にも【皇帝の紅薔薇園】を使わせる事が出来なくなる。
それではずっと【天使の羽衣】を纏ったままとなり、痛撃を与えるなど困難を極めてしまう。
仮に使用しても、俺の方へ問答無用で向かわせてくるのは目に見えている。マリスに助けを求めるにも―――駄目だ、時間が足りない……!
ならどうする……? どうする……! どうすればいい……!?
「しかし、ここで手打ちにしようじゃあないか。殺戮の天使、そして麟斗君」
「!?」
「……え?」
ロザリンドが口を開けば……悩む俺に、表情を変えるマリスに、そして叫びもしない楓子へ告げられたのは、予想だにしない言葉だった。
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