第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十九 〜義姉妹〜
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つけないといけないぐらいです」
軽く睨むようにしながら、愛里が答えた。
「そのようですね。武ばかりを重んじ、政や庶人を軽んじるのではないか……そんな疑念を抱いてしまっていました。頭を下げたのは、その事へのお詫びです」
「では士燮さん。歳三さんを認めていただいた、そう解釈して宜しいのですか?」
「ええ。少なくとも、州牧としては適任でしょう。土方様、今後とも宜しくお願い致します」
「うむ」
何やら含みのある物言いだが、士燮の表情からは何も窺い知れぬな。
……だが、要らぬ波風を立てる事もあるまい。
「歳三殿。お耳に入れたい事が」
夕刻。
疾風(徐晃)が白兎(董旻)を伴い、執務室に姿を見せた。
「聞こう」
「は。……此処では、些か」
「今は誰もおらぬぞ」
「いえ。念には念を入れて、と思いまして。ご同行願えませんか?」
「……良かろう」
疾風は慎重な性格だが、その上にここまで神経を配るとは、かなりの大事と見て良い。
「愛里、朱里。まだ落款の必要な書簡は残っているか?」
「ええと、私の方は大丈夫。朱里ちゃんの方は?」
「はい、こっちも片付きました」
「わかった。では少し出て参る、後は頼むぞ」
二人が頷いたのを確かめ、私は腰を上げた。
「へい! 担々麺と棒々鶏お待ち!」
「老酒と回鍋肉追加で!」
雑然とした、城下の飯店。
かなりの繁盛らしく、店は大入りだった。
話は通っていたのか、店に入るなり一番奥の個室に案内された。
「疾風。此所は?」
「ご心配なく。私の手の者が経営している店で、店員は皆素性が確かな者ばかりです」
「そうか。それに、密談をするならばこのような騒然とした場の方が聞かれにくい……という事か」
「ええ。ふふ、白兎様。言った通りでしょう?」
「はい」
そう言って、二人は互いを見合わせて微笑んだ。
「何の話だ?」
「疾風様が、父上にはくどくどと説明する必要はないでしょう、と仰せだったのです」
「歳三殿はそういう御方です。白兎様、くれぐれも肝に銘じて下さいませ」
冗談めかして、疾風が言った。
「随分と、意気投合したようだな。白兎」
「ええ。月姉様とは勿論違いますが、何だか新しい姉様が出来たような気がして……あ、申し訳ありません」
慌てて赤くなる白兎。
間諜として厳しい修練を積んでいた筈だが、寧ろ感情豊かになっている気がする。
……いや、これが本来の白兎なのやも知れぬが。
「ほう。どうだ、疾風。このような妹ならば申し分ないか?」
「そうですね……。性格も素直ですし、間諜としての才も十二分に備えていますね。確かに、妹であれば良かったかも知れません」
「ならば、義兄弟、いや義姉妹となってはどうだ?」
「義姉妹、ですか?」
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