第十六章 ド・オルニエールの安穏
第三話 何時か宿るあなたとの―――
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国に乗り込むこともそうだが、近衛隊に平民を多数登用したこともそうだ。
理由はある。
信用できる貴族があまりにも少ないからだ。
だからといって、貴族をないがしろにする理由にはならない。
いずれ不満が限界に達すれば、中立だった者が敵になってしまう。
そうなれば、どうなる?
下手をすれば、トリステイン人同士の争いが起きてしまう。
だから、国内の貴族たちの不満を抑えるために、彼らの一人と結婚しなければならない……それも、ちゃんと、わかっている。
―――王の仕事とは、つきつめればどこに何を分配するのか最終的に決定するということ
その分配されるものには、自分も含まれていることも、わかってはいる―――いるのだ……。
わたくしは、あの人の力になりたい。
隣りに立って、共に戦う力はない。
なら、王として、彼の力になればいい。
彼の力になる。
だから、その目的のためならば、どんな手段でも……。
だけど―――
―――誓おう。俺の全てを持ってして、必ずあなたを守ることを
何もかもに目を背け、誤りだと知りながら全てから閉ざしてわたくしを、ただ泣いているからと手を差し伸べてくれた人。
もし、望まぬ結婚をすれば、笑えるのだろうか……。
王座から逃げたくなれば、その力になるとも誓ってくれた彼の前で、わたくしは笑えるのだろうか……。
―――笑える筈がない。
彼ではなくてはいけない。
彼じゃなくては嫌なのだ。
愛を囁かれることも。
躰に触れられることも。
何もかも、あの人じゃなければ嫌だ。
でも、王なのだ。
始まりはただ流された結果だが、自分で選んだ道だ。
耐えなければ、ならない。
そう、思っていたのに……。
―――どこぞの“誰かさん”に嫌われないで、手段を選んでいられないような目的を達成する手段とは
知っていた。
わたくしは、彼女を知っていた。
時折見る夢。
その中に、彼女はいた。
彼と共にいる彼女の姿を。
どのような困難を前にしても、目を背けず胸を張り対峙する。
あの人が、憧れをもって見る彼女。
だから、聞いてみたかった。
彼女なら、どうするのだろう、と。
だから問いてみた。
その問いに対する彼女の答えは、
―――その手段で、自分も幸せになることよ
「……まったく、簡単に言ってくれます」
文句を言いながらも、口元が綻ぶのが止められない。
胸にかき抱いた手がゆっくりと身体をなぞり下へと進む。
下腹部に置かれた手。
その下には、何時か命が宿るだろう。
自分と、そして
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