第十六章 ド・オルニエールの安穏
第三話 何時か宿るあなたとの―――
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が、そうそう簡単に代官に全てを任せるとは思えない。最終的には代官に任せるようになるかもしれないが、そうなるまでに色々と頑張りすぎるような気がする。
ただでさえ戦争続きで、これからもまだ何かありそうな現状、そんな事に気を使っていれば倒れてしまうかもしれない。
でも、折角の姫さまのご好意を蔑ろにはできない。
ルイズの思考が再度ぐるぐると回り始め出そうとする、と―――。
「別に一人で全部しなくちゃいけないわけでもないでしょ」
「あなた……」
ルイズの耳に凛の気遣わしげな声が届く。
はっとルイズが顔を上げると、ワインをくゆらせながら、凛が微笑みかけてきた。
「領地経営はしたことないけど、管理ならお手の物よ。三十アルパンだっけ、精々十キロ四方の土地程度、遠坂家が管理していた土地に比べれば大したことはないわ。そんなに心配しなくても大丈夫よ」
「……全く、大した自信家ね」
不満気に、しかし何処か頼りにしているような、そんな微妙な顔でルイズが呟く。
話がまとまるのを感じたアンリエッタは、満面の笑みを浮かべると手をぽんと叩いた。
「それでは、書類は後で届けますので、食事を再開しましょう」
食事が再開されると、やはり女が三人もいるからか、話題が尽きる事なく、話をつまみにと短時間でワインがいくつも空になっていく。パーティーや歓迎等で会食が多いアンリエッタは、何時もは程々で飲むのを止めるのだが、今日は何故か手を止める事なく飲み続けていた。ワインが五本を越え、六本目に突入し、流石にそろそろ止めようかと士郎が声を上げようとした時であった。
アルコールが回り、頬を赤く染めたアンリエッタが、しかしアルコールによる淀みがない目で凛を見つめながら呟くように声をかけたのは。
「ミス・トオサカ―――いえ、リンさんとお呼びしてもいいでしょうか」
「ええ、勿論いいわ。じゃあ、わたしもルイズのように姫さまと呼んだ方がいいかしら?」
「ちょっと」
何処かおどけた調子で凛が笑うと、ルイズが非難の目を向けてくる。しかし、当の本人であるアンリエッタは口元に好意的な笑みを浮かべた。
「好きな呼び方で構いませんわ」
「―――ええ、わかったわ。それで、何かしら? どうもさっきから私に何か聞きたそうだけど」
テーブルに肘をつき、頬杖をつく凛に、ルイズの目がますます険しくなる。しかし凛は全く気にした様子を見せることなく、一人で二本以上ワインを空けたにも関わらず澱んでいない目でアンリエッタ見つめた。
アンリエッタは酔いを覚ますためか、氷が浮かぶ水差しからコップに水を注ぐと、それをゆっくりと飲み干した。
「……ふぅ……やはり、気付いておいででしたか……」
「あれだけ見られたらね。でも、私
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