第十六章 ド・オルニエールの安穏
第三話 何時か宿るあなたとの―――
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。それよりも、まずは食事にしましょう。折角の料理が冷めてしまいますから」
ぱんっと手を叩くアンリエッタを合図に、士郎たちは目の前に並べられた料理へと手を伸ばし始めた。
一同が料理とワインを一通り楽しんだのを確認したアンリエッタは、手に持ったワイングラスをテーブルに置くとゆっくりと士郎たちを見回した。
その顔には先程まで浮かんでいた笑みの姿は何処にも見当たらない。
部屋の空気が明らかに変わるのを感じた士郎たちは、気を引き締めアンリエッタへと顔を向けた。
「ルイズ、そしてシロウさん。一つ、あなた方にお願いしたい事があります」
「お願いしたいこととは?」
姿勢を正した士郎が問うと、アンリエッタは小さく頷くと口を開いた。
「新ガリア王―――シャルロット女王陛下との交渉官を引き受けて欲しいのです」
「っ―――はい。よろこんでお受けします」
「ルイズが了承するなら、俺も断ることはないが」
「良かった」
一瞬驚きで空白の時間が生まれたが、直ぐに了承の意を示してくれた士郎たちに、アンリエッタは安堵の息を吐いて笑顔を見せた。
「助かりました。実は、断られたらどうしようかと心配していたんです」
「姫さまの願いを断るなんて。そんなことありえません」
わたわたと手を振るルイズに笑顔を向けていたアンリエッタは、胸に手を当てると、二、三度深呼吸し士郎に向き直った。
「とはいいましても、初のお仕事は、ガリアで行われる即位記念園遊会の席となるのでまだ暫くは暇となるのですが……しかし、シロウさんが外交官になるにつれ問題が一つあります」
「問題、ですか?」
「はい。ルイズは兎も角、シロウさんは一国の大使としては、お名前が短すぎるのです」
「名前、ですか?」
「―――へぇ」
アンリエッタの言葉に、最初に反応したのは貴族であるルイズではなく凛であった。凛の何かに気付いたような声に、その場にいる者たちの視線が向けられる。腕を組み、集まった視線を受け止めた凛は、ジロリと隣に座る士郎に目をやった。
「つまり、アンリエッタ陛下は士郎に領地を与えたいということ」
「はい」
「っええええええええ!!?」
凛の言葉に軽い調子で頷いてみせたアンリエッタに、ルイズが淑女らしくない驚愕の声を上げ椅子から立ち上がった。その衝撃でテーブルの上のワイングラスが倒れかけるが、咄嗟に士郎が横から手を伸ばしそれを受け止めた。しかし、ルイズはそんな様子に気づかずテーブルに乗り上がる勢いでアンリエッタに詰め寄っていく。
「ひ、姫さま、それって本当ですか?」
「ええ。トリスタニアの西に、三十アルパン程度の狭い土地ですが、ド・オルニエールと呼ばれるそこをシロウさんに与えたいと」
「それはさ―――」
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