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乱世の確率事象改変
道化師は桃の香に誘われず
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仲でもございますまい……そろそろこの堅苦しい言葉遣い止めさせて貰うぞ」

 傲岸不遜に切り替わった彼の空気は、先程焔耶に向けたモノと違うモノ。飄々としつつも不敵に溢れ、誰であろうと下に見ないが誰であろうと上にも見ない。
 威圧では無いのだ。自分という確たる芯を持った人間が其処に居るだけ。お綺麗に纏めようとする上っ面を投げ捨てれば……“黒麒麟”が現れるだけである。

 急な切り替わりに新参の四人は着いて行けず。反して桃香と愛紗は表情を引き締め、鈴々は何を話すのかと不思議そうに首を捻り、星は相変わらずと苦笑して目を細める。
 コキコキと首を左右に動かし、秋斗は目を瞑って口を開いた。

「この街を見てきた。いい街だな」

 許可を得るわけでもなく勝手に、目前の相手が一軍の主だからと気負うこともなく、ただただ普段通りの声音で語る。
 普段から華琳の前で政策や軍事、そして乱世のことを話している彼にとって、桃香と面を合わせても焦燥や怯えに駆られることなど有り得ない。
 己が望む結果を掴む為に、気兼ねなく語ればいい。

「人が助け合って生きてるってよく分かるよ。
 治めるモノへの感謝も、尋ねてみれば良き方だと称賛ばかりが出てくる。街の治安なんかは警備隊政策で安定を保ち、哀しい出来事が起こるのも極僅か。改革の途中なのは一目瞭然だったが、時機に浸透していくだろう。
 何より……笑顔がある。子供も老人も、女も男も誰も彼も……道行く人が生を謳歌してるんだろうな」

 楽しげに、穏やかに、自分が見てきたことを話していた。空気はひり付いている中での穏やかさ。彼の話す様子が異質に際立つ。
 旧知の四人にとっては当たり前、新参の四人にとっては……不気味に思える。
 ただ八人全員、何の意味があるのかと深読みしても、彼が何を言いたいかなど読めるはずも無い。
 彼女達は続きに耳を傾けるしかなかった。

「俺は人が平穏を享受している街が好きだ。
 子供達が治安の良し悪しに怯えることなく遊びまわる街が好きだ。
 商人が気軽に商売話を掛ける街が好きだ。
 恋仲の男女が仲睦まじく歩ける街が好きだ。
 老夫婦が茶屋で団子を頬張りお茶を啜れる街が好きだ。
 そんな普通で、有り触れていて、何処にでも作れそうな街が好きなんだ。きっと……この街は俺の好きな街に違いない」

 不意と浮かべた笑顔は真っ直ぐの感情を表す。
 彼が心の底から本心を話しているだけだと分かったモノは少ない。
 詠と、星と、鈴々くらいだった。
 華琳の領内で忙しなくしつつも笑顔で駆け回っていたのは彼であり、白蓮の街でいつでも笑って平穏に尽力していたのは彼であり、平原と徐州で仕事仕事と忙しくしながらも民に向ける笑顔が変わらなかったのも彼だから。
 三人は別々の土地で、同じ笑顔
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