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乱世の確率事象改変
道化師は桃の香に誘われず
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――嗚呼……

 近くに感じていたモノが、するりと掌から抜けて行く。
 直接叩きつけられる明確な拒絶であれば、まだ呑み込み、抗おうと出来ただろう。雛里の時のように、自らの意思を伝えることが叶っただろう。

 だがしかし、正しく彼女は、どうしていいか分からなくなった。
 焦点を必死で彼の瞳に合わせて、桃香はどうにか掠れた声を振り絞る。

「……あ、あの時あなたは、私が描く未来は、必ず作れるって……言った」

 やっと絞り出したのは、過去に肯定された事実だった。
 それを認められれば、まだ自分を失わずに済むから、と。

 彼には記憶が無い。どの時、どんな話の中で言ったかなど分からない。
 故に、彼は只々……呆れたようなため息と共に、己の感情を表すだけ。子供を諭すような視線を向けて、秋斗は穏やかに微笑んだ。

「クク、作れるだろうよ。いつかはお前の望む未来になるだろう。
 これで満足か?」

 肯定はされた。随分と、おざなりに。ナニカ言葉が続くと思っていた桃香は、たったそれだけの返答にまた息が詰まった。

 弾劾を口にしてくれたら良かった。
 怨嗟を向けてくれたら良かった。
 憤慨を突き刺してくれたら良かった。

 その方がまだ救いがある。過去の自分の失態を再確認し、前に進めるのだから。
 無関心で無機質、どうでもいいモノへの扱いは、彼女の理想を根幹から揺るがし、歩む道を暗闇に閉ざす最悪の切り替えし。
 共に戦ったという事実があるからこそ、彼の放った冷たい刃は桃香の心を切り刻んだ。

 桃香の瞳は、もう彼に焦点を合わせられない。

――やめて……

 じわじわと滲む感情は恐怖というより空白で、

――あなたが、私とは違う世界を目指すと言ったあなたが、そんな簡単に、肯定しないで……

 心に飛来したモノは無く、ぽっかりと胸に穴を開けるだけの、

――どうでもいいって、言わないで……

 僅かなナニカすら得られない、反抗さえ無駄だと分かるほどに虚しい、虚無。

 彼が取ったのは悪感情のどれとも違う。
 否定の感情であったならある意味で道しるべ。
 “其処が許せない”、ということは何処かは許せて、どうにかすれば許せるということだ。

 しかし彼の向けた無関心という現実は、成長を促すことも、歩み寄りを許すことも無い冷たい冷たい関係性。

 伸ばした手が届かない。
 誰かと共に手を繋ごうとしても、別の誰かが間に入ることで繋がったとしても……繋がったと思っているのは自分だけで、彼だけは別の世界に居るかのように繋がることは無い。

 一方通行では桃香の描く未来は成り立たない。
 相互関係が無いのなら、いくら自身が繋がれたと喚こうと、彼女の手は届いていない。
 伸ばしても
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