道化師は桃の香に誘われず
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た方が魏延殿、ですね。街を見学させて頂き耳に挟んでおります。
お初に、皆さま方。以後お見知りおきを」
お辞儀を一つ。後にぐるりと見渡す。目に宿る不敵さを隠そうともせずに。
特筆して語るべくモノは無いかと思っていたが、冷たい双眸が彼を掴んでいた。
知性の宿る冷たさは何を思うか……徐庶――藍々の油断無さに、秋斗は警戒を一つ高める。
「そちらの方は? ウチの張飛と面識があるみたいッスけど」
自己紹介をしているくらいなのだからと、藍々は切り込んだ。一歩答えを間違えればどうなるか、というような疑問。
――えーりんとゆえゆえの真実を知ってるかどうかが問題。さて、どうするかね……。
彼女が詠の過去を知ってか知らずか……秋斗には判断し兼ねる。秋斗自らが説明してもいいが、悩んでいる間に脇から声が上がる。
「……最近、曹操軍の末席に加わりました荀攸、荀公達と申します。面識については劉備殿にお尋ねください。自らの首を絞める覚悟がおありならお好きなように、とも言っておきましょう」
答えを聞いて眉根を寄せた藍々を見れば、詠の過去を知らないことが分かった。
秋斗は詠の切り替えしに思わず舌を巻く。
――名前を変えたことを昔の知り合いに伝え、董卓と自分が生きている事をばらしたければばらせという脅しを掛けたのか……さすがはえーりん。
官渡の時分にばらされることは問題であったが、帝の信と大陸一の勢力を手に入れた今となっては懸念事項は何も無い。
逆に声を大にしてそんなことを桃香達が言った場合、戯言をと笑い飛ばされるのは間違いなく言った側。
大勢力に対する嫉妬か、はたまた情報操作か……なんにせよ、事実確認を行うことも許されず、発言の影響力も低すぎて華琳の勢力圏内をかき乱す事は望めない。
華琳が帝を抑えている以上、桃香達が大義名分を得ることも無く、むしろ言いがかりをつけたとして戦争の引き金にせなり兼ねないのだ。悪逆の董卓を匿ったのは劉備軍だと言い返される可能性さえある。
詰められれば詰められる程、桃香達に逃げ場は無くなるのだ。桃香が“黒麒麟が勝手に助け、自分達は知らなかった”と白を切れるほど非情になれない限りは。
「あ、後で教えるよ藍々ちゃん」
案の条、桃香の頬がひくつく。詠にとっては予測の内。むしろその程度をぼかせなければ落第の判を押す所であった。
桃香はもうずいぶん長い間書類仕事を行い、人間の黒い部分も見てきた。だからだろう。詠の仕掛けた脅しの意味を理解し、彼女はその危うさを悟ったのだ。
しばし沈黙。聞きたいことは他にあるかと、無言で問いを投げてみる。反応が無いのなら、彼としてはもう外面を気にする必要もない。
「……さてと、非公式の会合でもございますし、今更気を遣い合う
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