第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十八 〜新たな娘〜
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、諸葛亮様、趙雲様に揃って伝えられたとの事です!」
「それで、厳顔はどうした?」
「直ちに軍を率い、益州へと引き返しました。諸葛亮様らも、番禺に戻られると」
「わかった。下がって休め」
「ははっ!」
そうか、劉焉が、な。
面識はないが、漢王朝の一族でありながら、益州での独立国家樹立を目指していたと聞く。
私の知識と相違なければ、後継者は劉璋となる。
……暗愚と申すか、少なくとも劉焉のような野心はない人物の筈。
となれば、その動向には眼を光らせる必要がなくなる。
とにかく、この交州は広大だ。
それに接する勢力の一つが、少なくとも脅威となり得ぬのであれば、皆の負担も少しは軽減されるであろう。
……無論、全くの無警戒とするつもりはないが。
ただ、厳顔と会う事が叶わぬのは残念だ。
紫苑が親友と言い切る程の人物、敵となるか味方となるかはわからぬが、会う価値は十分にあるだろう。
その夜。
約束の刻限に、疾風が姿を見せた。
「歳三殿。お待たせしました」
「うむ。参るか」
「は。……む、稟も来るつもりか?」
「ええ。もう起き上がれますし、委細は歳三様から伺いました」
指示通り、終日身を休めていた事もあり、稟は血色が良くなっている。
急激な運動でもせぬ限りは、もう大丈夫であろう。
「疾風。怪しげな者は入り込んでおらぬな?」
「はい。念には念を入れ、私自身で確認しました。これで網の目をかい潜れるとしたら、明命ぐらいのものかと」
「良かろう」
周囲の気配を確かめ、部屋を出る。
殆どの者が寝静まっている刻限だけあり、周囲は静寂に包まれている。
コツコツと、靴音が響くのは致し方あるまい。
「…………」
「…………」
全員無言で、ひたすらに歩く。
自らの城で、こうして人目を憚る真似をせねばならぬとは、な。
だが、今はとにかく、慎重に物事を運ばねばならぬ時期だ。
この交州を完全に掌握し、そして十常侍らに手出しの出来ぬようになるまでは。
そうなれば、新たな手も打ちようがある。
「……む」
「疾風。どうかしたか?」
私は、疾風の耳元で囁いた。
疾風もまた、声を潜めて返す。
「誰か、潜んでいます。微かに気配を感じます」
「……お前の手の者ではないのだな?」
「はい。ただ、殺気や敵意は感じませんが」
「相手は一人か?」
「……恐らく」
何処かの間諜ならば、襲いかかってくるか、逃げ出すかのどちらかを既に選んでいるであろう。
様子を見ているのか、或いは動くに動けぬのか。
「疾風。私が奴の気を引く。その間に、取り抑えよ」
「しかし、相手の正体が不明なままです。このまま対峙して、部下を集めましょう」
「いや、刻が惜しい。それに、董旻の
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