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至誠一貫
第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十八 〜新たな娘〜
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権力欲は異常なものですらあるからな。
「やはり、一度連絡を取った方が良いな。頼めるか?」
「お任せ下さい。何進殿のところにも人を遣る事にします」
「うむ」
「それから歳三様。……董旻さんの事ですが」
 愛里は声を潜めた。
「大丈夫だ。周囲には手の者を張り付けている」
「ありがとうございます、疾風さん。……董旻さん、お怪我も癒えたようです。どうなさいますか?」
「そうだな……」
 あまり公の場に出す訳にはいかぬ。
 何皇后側に知られるのは論外だが、十常侍らに利用される可能性も捨てきれまい。
「私の傍につけておくか」
「いえ、それは危険です。歳三殿の周囲には怪しい者を近付けさせぬよう、警戒を怠るつもりはありません。ただ、万が一という事も考えませぬと」
「疾風の言う事にも一理ありますな。ならば、新規採用の文官に混ぜてしまうのはどうだ?」
「……それも危険ですね。中原出身の方が混じっていれば、董旻さんの顔を見知っている場合もあり得ます」
「さりとて、いつまでも人目を避けて閉じ込めておく訳にもいくまい」
「……それなのですが。私にお任せいただけませんか?」
 と、疾風。
「何か案でもあるのか?」
「はい。本人が望んだかどうかはともかく、董旻殿は何度も間諜としての働きを見せています。鍛えれば、私同様の働きを見せられるかと」
「……成る程。疾風さんの隊ならば、表に出る事はまずありませんね」
「それに、覆面をしていても怪しまれぬな。殿、疾風の考えに私も賛成です」
 ふむ。
 確かに妙案やも知れぬな。
「だが、問題が一つあるな」
「ええ。本人の意思と覚悟、ですね?」
「そうだ。疾風、夜を待ち、我が部屋へ参れ」
「……はい」
 何故か、頬を赤らめる疾風。
 ……何か、勘違いをしておらねば良いのだが。
「では、皆頼んだぞ」
「御意です!」
「はっ!」
「お任せを!」
 ふう、まだまだやるべき事は山積しているな。
 体制を早急に固め、軌道に乗せねば。

「土方様。諸葛亮様から急使が」
 執務室にて落款の最中、兵が息を切らせながら飛び込んできた。
「朱里から? 通せ」
「はっ!」
 何事であろうか。
 星が一緒だが、不測の事態でも起きたか。
 だが、州内の事であれば、疾風からも知らせが入る筈。
 となれば、益州軍に何か動きがあったか……?
「も、申し上げます!」
 二人の兵に担がれながら、使者の兵は入ってきた。
「まずは息を整えよ」
「は、はっ!……ハァ、ハァ……」
「余程急いできたようだな」
「……は、はい。も、もう大丈夫です」
 水を飲み、呼吸も落ち着いてきたようだ。
「では聞こう」
「はっ! 益州牧の劉焉様が、急逝されたとの由」
「劉焉が? 確かか」
「はい。厳顔様より
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