第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十七 〜紫苑の覚悟〜
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する事自体、烏滸がましいものはあるな」
「嵐もかなり呆れていましたな、そう言われますと」
彩も頻りに頷く。
「郡内を歩き回っても、庶人の暮らしぶりにかなり余裕が感じられました。豊かさが、庶人にも享受出来る環境にあるのでしょう」
「税収も安定していますし、貿易での実入りも大きい事がわかります。……劉表さんや劉焉さんが、この地を狙うのもある意味必然なのかも知れませんね」
想像以上に豊かというより他にない。
異民族や賊らであれば、尚更見過ごしはしまい。
「彩、疾風。軍の方はどうか?」
「はっ。流石に異民族や黄巾党などを相手に一歩も引かなかっただけあり、兵の練度もなかなかのようです」
「兵の総数は、元々我が軍に属していたものと合わせ、規模は十万ほどとなりました」
「凡そ倍か。だが、将はどうか?」
疾風と彩は、顔を見合わせる。
「……そこなのですが。どうやら、士燮殿の一族自ら指揮を執っていたようです」
「無論、小隊長程度の人物はいるのですが。纏まった数を指揮出来る程の人材は見当たりませんでした」
人材不足は確かに痛手だが、裏を返せば今まではどうであったか。
この広大な交州を、あの一族だけで文武ともに纏め上げていたという証拠でもある。
凡庸な者には、到底務まるまい。
……いや、寧ろ類い希な程に有能、そう評すべきだな。
「詳細は風らの報告を待って、という事になるが。交州の統治、一筋縄ではいかぬな」
「そうですね。少なくとも、士燮さん達抜きには困難、いえ不可能でしょう」
「……とにかく、勝手が違います。冀州では地の利がありましたが、此所は異国も同然では」
十常侍どもは、ここまで見越して手を打ったのであろうか。
そうだとすれば、些か連中を甘く見ていたという事になるが。
……勘ぐり過ぎであれば良いのだが。
「ともあれ、人員の充足には時を要する。それまでの間、辛いであろうがしっかりと頼むぞ」
「はいっ!」
「はっ!」
「御意!」
「…………」
稟の反応がない。
「稟。何か所存があれば申せ」
「……は。はい……」
と、稟の身体がふらついた。
倒れかかるところを、疾風が慌てて受け止める。
「どうしたのだ、稟!」
「……ちょっと、失礼しますね。……酷い熱です」
額に手を当てた愛里の顔色が変わる。
「いかん。すぐ、横にさせよ。私の臥所を使え」
「急ぎ、医師を呼んで参ります!」
先ほどから様子がおかしかったのだが、やはり体調を崩していたか。
……無理にでも、休ませるべきであった。
「気がついたか」
「あ、歳三様」
二刻程して、稟は目を覚ました。
「……此処は?」
「私の部屋だ。どうだ、気分は?」
「申し訳ありません。すぐに、自分の部屋に」
無理に起き上
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