紅蓮
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や破壊で発せられる騒音とか、接触して直接起こされるなどと言った、いわゆる安眠妨害に値する行為。それを止めようとして、あいつは言語吸収を行う」
「ふむ……まだピンとこないのだが、安眠妨害と言語吸収にどのような関係があるのだ?」
「わかりやすく説明するとだな……例えば集中したい時や静かにしてほしい時に、周りが騒がしいと当然イラつくだろう? 他にも寝床に入って気持ち良く睡魔がやって来た時に、無粋にも起こされたりしたら腹立つだろう?」
「まぁ、その通りだな。それぐらい我も想像できるぞ」
「それでファーヴニルは原因となる要素……この場合は言語を吸収し、世界を静寂に満たそうとする。あのように言語を失った人間は自我や記憶を喪失し、人形も同然の状態になる。そうやって無力化する事で自分が眠りに着くのを邪魔されないようにしている訳だ」
「なるほど……筋は通る。しかし、それなら誰にも眠りを邪魔されない場所に行けばいいのではないのか? 人間のせいで追い出す形になってしまうが、それが最も丸く収まるはずではないか?」
「ところがそうはいかない理由がある。実は絶対存在には過剰なまでに高い防衛本能があり、一度敵と認定されたら対象を全て殲滅するまで止まらなくなる。つまり人間という存在全てが絶滅した後で、ようやくファーヴニルの防衛本能が収まる事を意味する。それを為すまで、あいつは自力で眠る事が出来ないのだ」
「絶滅とは……それではあまりに手遅れ過ぎる。防衛本能を抑えるにはどうすれば?」
「ここで月詠幻歌が意味を持つ。半ば暴走しているも同然のファーヴニルの防衛本能を鎮め、本意のまま眠りに着かせる事が出来るのが月詠幻歌だ。他の絶対存在は不明だが、元から安息を求めているファーヴニルには効果がある。しかし言語が無ければ、眠らせてもらうための月詠幻歌は歌えない。興味深い事に、そこが性質的に矛盾している……絶対存在らしい狂気が垣間見えるな」
「そういえば絶対存在は高密度の暗黒物質を宿しているのであったな、狂気の面が強いのも当然と言えば当然か……。して教主殿、それがわかった上で我らはどのように動けばよい?」
「事前に決めた作戦のまま角を破壊する。そして言語を取り戻し、再び月詠幻歌による封印に挑む。さっきの攻撃で動きが止まっている内にやるぞ、ディアーチェ!」
「心得た、援護は任せよ!」
背中をディアーチェが掴み、俺はオーラの腕をばねのように使って一気に跳躍。空中の軌道の微調整をディアーチェに任せ、出来るだけ一直線にファーヴニルの頭部に今なお健在の角へと向かう。眠りたい奴を寝かすために、あえて一部を破壊すべく攻撃を加える。人間が矛盾の塊なのは自明の理だと今まで思っていたが、どうやら絶対存在もその枠の中に入っていたようだ。だが代わりに、その矛
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