暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
ダブル・ヒーロー
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ェのソレは、単なる逃避だよ。安定的な部屋の角っこで膝抱いてすすり泣いてるガキだよ。いや、それ以下かもな」

躊躇なく。

遠慮なく。

拳が振るわれる。

ただの非力な少年の拳だが、それはきっとただの痛み以外の――――痛み以上のものを与えたはずだ。

「大人ぶって、痛みに慣れたフリなんかしてんじゃねぇよ」

「き、きみは……」

胸倉を掴まれながら。

壁に押し付けられながら。

それでもなお、どこか達観した目を持つ少年は、喘ぐように口を開く。

「今のきみは《狂怒》……?それとも《狂ら――――」

()()()()だよクソッタレ」

ゴドン!!と凄まじい音が炸裂した。

蓮が思いっきり振りかぶった額が、少年の脳天に落とされた音だ。

「ご……ァッ!?」

「澄ましたことぬかしてんじゃねぇっつってんだよ。僕は僕だ。他の誰でもないんだよ。そして、それは君もだ。初代」

「ぼく…も?」

不思議装に見返す瞳に、強い光を宿した少年は言い募る。

「《鎧》の制御はもう離れた?じゃあなんで君はまだここにいる?さっきの口ぶりからして、縛り付けられてるってわけでもないんだろ?」

「……………………………………………………………………………………………」

呼吸が。

止まった。

眼を見開いて静止する初代《災禍》に、ちっぽけな少年は言う。

「助けたいからだろ」

報われなくたっていい。

意味なんかなくていい。

傷ついたって構わない。

理屈なんざ後付けで充分だ。

ただ。

自分のために妄執に憑りつかれ、狂ってしまった一人の少女に、手を差し伸べたかったから。

引っ張り上げたい。

もう大丈夫、と声をかけてあげたい。

そして――――ありがとう、と言いたい。

それは、終わってしまった物語の主人公(ヒーロー)の、悪足掻きでみっともない、負け惜しみのようなものかもしれないのだけれど。

でも。

だけど。

「違う。それは違うよ、初代」

終わってなんかいない、と空気に声を乗せながら、蓮はへたり込んでしまった少年に手を差し伸べる。

「いつまでお姫様(ヒロイン)を待たす気だよ、主人公(ヒーロー)。少しくらい前振りが長くてうんざりしたのは分かった。フラグがない?伏線がまだ足りない?別にいいだろ、そんなの。もういいだろ。もう充分だ。いい加減、終わらせてやろうよ」

「――――――――ぁ」

一瞬の静寂の後。

ぴし、というごく微かな、しかし確かな響きが生まれた。

そして蓮は見る。少年が叩きつけられ、背を力なく預ける壁、そこに微細な白いラインが、放射状に少しずつ広がっていくのを
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