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至誠一貫
第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十六 〜新天地〜
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のような顔つきはまず見せる事はない。
「お答えする義務はないと思いますが。今は、土方様に伺っているのです」
「そうは行きません。私は歳三さんから内政をお任せいただいている身です。庶人の皆さんの事は常に念頭に置かなくてはならない立場です」
「……なるほど、文官の立場としてはそうかも知れませんね。ですが、土方様は武官。武官とは戦いが本分、その為には庶人が納める税や食糧を消費する立場ではありませんか」
「待たれよ、士燮殿。貴殿は殿を、そして武官を愚弄するおつもりか?」
 彩も、珍しく怒りを露わにしている。
「あなたもですか。言った筈です、私は土方様にお伺いしているのだと」
「何だと!」
「彩、愛里。控えよ」
「しかし、殿!」
「歳三さん、私も黙っていられません!」
「……控えよ」
 繰り返して言うと、二人は不承不承、押し黙った。
「士燮。私は確かに武官、戦いが本分という事も否定するつもりはない」
「…………」
「だが、私も出自は庶人。その暮らし向きがどのようなものか、官吏と化した武士が庶人にとってどういう存在かは、身を以て理解しているつもりだ」
「……では、ただ支配し、その地位を利用するおつもりはない、と?」
「そうだ。第一、そのような考えでは、この二人、いや、皆が私については来まい」
 フッと士燮は息を吐く。
「……わかりました。ですが、語るだけならば誰でも出来る事。そのお言葉が本物かどうか、これから見定めさせていただきます」
 そして一礼すると、士燮は部屋を出て行った。
「殿! 何故あのような物言いをお許しになりますか?」
「そうですよ。歳三さんが冀州でどれだけの成果を上げ、庶人に支持されたか。知らない筈がありませんよ」
「落ち着け、二人とも」
「いいえ、我らならまだしも、あれは殿に対する侮辱に他なりません」
「士燮さんは、人格者だと聞いていましたが……本当なのでしょうか?」
「決めつけるのは早急に過ぎるぞ。この番禺に残るのだ、その真意も何れ知れよう」
 だが、二人は納得がいかぬようだ。
「良いな、くれぐれも早まってはならぬぞ」
「……は。殿のご命令とあれば」
「……わかりました」
 とは申せ、二人はやはり腹の虫が治まらぬようだ。
 士燮の意図がまだ読めぬ以上、無意味な軋轢は避けねばならぬ。
 ……疾風(徐晃)の戻りを、今は待つしかあるまいな。

「相変わらず、賑やかですね」
「ああ。活気がある街は、いつ見ても良いな」
 二人を伴い、城下へと出た。
 いずれにせよ、今日は政務を見る気にもなれぬ以上、城に籠もっている事もあるまい。
 私一人でも構わぬのだが、あのままの二人を放置しておく事も出来ぬ。
 それに、また騒ぎに巻き込まれる事があらば、皆から叱責を受けてしまう。
 その点、こ
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