第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百十 〜陳留にて〜
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「これ、あまりからかうでない。雛里は純真な娘だ」
「あら、まるで私が不純という風に聞こえるわよ?」
「ほう。ではそう自覚があるという事だな?」
「そういう貴方はどうなの?」
質問に質問で返すか……まあ良いが。
「私はそこまで高潔な人間だとは思っておらぬ。それは自惚れと言うものだ」
「流石ね。でも上に立つ者、ある程度の虚像は持つべきね」
「人それぞれというだけの事。お前がそう望むのならそれで良い」
「言うじゃない。その言葉、これからも貫いてみせなさい。それでこそ、私の前に跪かせる楽しみが増えるわ」
諦めはせぬ、か。
「ところで華琳。このような掛け合いの為に私を連れ出した訳ではあるまい?」
「勿論よ。銀花」
荀攸は頷き、私を見た。
「はい。土方様、鳳統さん。この陳留をご覧になって如何ですか?」
「……思ったままを申せと?」
「そうです」
「ふむ。雛里」
「は、はい。城壁の綻びもなく、城門もしっかりしています。見張りも含め、堅牢な城かと」
「なるほど。土方様は?」
あくまで、私の意見を聞こうとする荀攸。
それとも、別の答えを求めているのか。
「商いが大いに賑わっているようだな。この分ならば税収も悪くはあるまい」
「仰せの通り、確実に税収は増えています。他にはございませんか?」
「他にか……」
と、その時。
「ひ、ひったくりだー!」
「誰か、そいつを捕まえてくれ!」
前方から叫び声が聞こえた。
「どけどけぇ!」
剣を振り回しながら、男が人混みから飛び出してきた。
二人、いや三人か。
警備の兵は見当たらず、通行人は逃げ惑うばかりだ。
「華琳」
「ええ」
私は兼定を、華琳は鎌を手にする。
「そこまでよ! 大人しくなさい」
「何だテメェら!」
「邪魔立てすると、痛い目見るぜ?」
「すっこんでろ、女と優男!」
凄めば引き下がるとでも思ったか、愚かな。
「歳三。殺さないで頂戴」
「良かろう」
一歩も引かぬ我らを見て、賊らはいきり立った。
「舐めやがって!」
「ぶっ殺せ!」
「くたばれ!」
三人が、一斉に襲いかかってきた。
攘夷浪士との斬り合いを思えば、欠伸が出そうな緩慢さ。
兼定を抜くまでもなかったやも知れぬな。
無駄に大振りな一撃を躱し、峰打ちを浴びせる。
「ガッ!」
額から血を流し、一人が倒れた。
「や、野郎!」
「こなくそ!」
「あら、相手は歳三一人じゃないわよ?」
華琳は軽やかに一人の懐に飛び込むと、鎌を振るった。
「ぎ、ぎぇぇぇ!」
その男は、剣を手首ごと断ち切られた。
「殺すなと申しておいて、随分荒っぽいで
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ