第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百十 〜陳留にて〜
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大食漢の季衣に取っても馴染みの店。
その二人が鉢合わせ、互いに競争心を持ってしまったようだ。
勝負は決着がつかぬまま、宴にて延長戦となったのであろう。
結果、二人の前には皿が山積みになっている。
「済まぬな、華琳」
「気にする事はないわ。季衣はいつもの事ですもの」
とは言うものの、あまりの凄まじさに顔が引きつっているようだ。
無論、口には出来ぬが。
「ご無沙汰しておりましたな、土方殿」
「おお、これは曹嵩殿」
徳利を手に、私の前にやって来た曹嵩。
「ささ、一献」
「忝い」
この世界の酒は、一般的に薄いものが多い。
私が作らせたものは濃く強いという評判だが、それもまだまだ普及にはほど遠い量しか出回っておらぬ。
この陳留でも、それは変わらぬようだ。
お陰で、酒に強くはないと自覚している私でもある程度過ごす事が出来ているのだが。
「交州牧に加えて、徐州牧も新たに命ぜられたとか。益々のご出世、何よりですな」
「いえ、交州は名ばかり。徐州もこれからにござれば」
「ははは、相変わらずご謙遜ですか。しかし、これでいよいよ華琳とは似合い……あだだだだ!」
華琳が、曹嵩の頬を盛大に抓った。
「お父様、挨拶が済んだらもう下がりなさいな」
「何を言うか。お前の……って足、踏んでおる! やめんか、いでで」
「さ・が・り・な・さ・い! 春蘭!」
「は、はっ! 曹嵩様、華琳様のご命令ですのでお許しを」
「こ、これ! もう少し土方殿とじゃな!」
そのまま、春蘭は抵抗する曹嵩を引き摺っていった。
「見苦しいところをまた見せてしまったわね」
「……いや。相変わらずの親子仲で何よりだ」
「……そうね。はぁ」
華琳は盛大に溜息を一つ。
「そう言えば、交州からの知らせはまだ入っていないの?」
「未だ何も得られておらぬ」
「そう。紫雲(劉曄)にも調べさせているけど、とにかく遠すぎるものね」
「……交州に手の者を送った、と?」
「正確には、荊州によ。貴方の許しもなく人を遣ったりはしないわよ」
華琳がそのような手ぬるい事で良しとするとも思えぬが、問い質しても本当の事は話すまい。
だが、この際僅かでも情報が欲しい。
疾風(徐晃)らを信じぬ訳ではないが、少なくとも華琳が協力を申し出る限りは受けるべきか。
「ところで華琳」
「何かしら?」
「私を陳留に招いた理由、一席設ける事だけではなかろう?」
「ふふ、当然よ。歳三ならその程度の惚けた考えで止まる筈がないと信じていたけど」
やはり、私に何かをさせるつもりか。
戦の助力ならば、これだけの手勢では何の役にも立つまい。
……となれば、私の知識が目当てか。
「ま、それは明
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