第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百十 〜陳留にて〜
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陳留に近づくと、迎えの軍勢が我らを待ち構えていた。
掲げられている旗には『楽』とある。
「華琳。あれは?」
「ああ、そう言えば歳三は凪と会った事がなかったわね。楽文謙、新たに召し抱えた将よ」
楽文謙……楽進か。
両夏侯や張遼に比べれば地味な印象があるが、曹操の元で良将として数々の武功を挙げた人物。
私の存在が故に、本来であれば華琳に仕える者が揃っていないであろうこの世界。
だが、変わらぬ点もあるようだな。
「まさか、凪の事まで知っているのかしら?」
「いや、初めて聞く名だが」
「ふふ、そうかしら? 歳三の事だから、油断も隙もないわね」
含み笑いをする華琳。
「楽しそうですね、華琳様」
「ええ、楽しいわよ。貴女は違うの、銀花(荀攸)?」
「私は何とも。まぁ、伯母さんみたいに条件反射で嫌悪感むき出しにはしませんけどね」
「桂花ね……。何か、騒ぎを起こさないといいけれど」
「その時は『お仕置き』しますからご心配なく」
「あら、じゃあ私も何か考えておかないと」
……妙な方向に楽しげな二人を見て、雛里が固まっているようだ。
「あわわわ。ご、ご主人様……」
「大事ない。我らには関わりのない……いや、関わってはならぬ世界の話だ」
鈴々は流琉と何やら話が弾んでいるようで、この空気には気づかぬらしい。
そんな我らの方へ、一人の少女が駆け寄ってきた。
全身に傷跡がある、いかにも歴戦の猛者と言った風情がある。
「華琳さま!」
「ご苦労様、凪。折角だから自己紹介なさい」
「え? こ、この場でですか?」
「ええ。それとも貴女、初対面の相手に名乗らないつもり?」
「い、いえ。た、ただ心の準備が……」
赤面する少女に、クスクスと笑う華琳。
「無理もないわね、天下に名だたる男の前ですものね」
「華琳。私は後でも構わぬのだぞ?」
「そうはいかないわ。私の麾下ともあろう者が、最低限の礼儀も弁えてないなんて言われたくないもの」
「……私は気にせぬし、そのような事を広めるつもりもない」
「貴方ならそうでしょうね。でも、これは私としてのけじめなの」
少女は意を決したのか、私を真っ直ぐに見据えた。
「お、お初にお目にかかります。わわ、私は名を楽、姓を進、字を文謙と申します」
「……土方歳三だ」
「は、はい! ご高名はかねがね」
緊張の余り、噛みまくる楽進。
「にゃはは、雛里みたいなのだ」
「り、鈴々ちゃん」
「これ、二人とも。それよりも、お前達も名乗れ」
顔を赤らめる少女、だが並々ならぬ闘気を感じる。
性根は素直そうだが、戦場で会えば決して侮れぬ相手になりそうだな。
「ほう」
陳留に入ると、活気溢れ
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