暁 〜小説投稿サイト〜
真田十勇士
巻ノ二十 三河入りその三
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「羽柴殿の様に天下を巡って戦い天下を治めることはない、主従ではあるが友でもある」
「我等は殿の友」
「家臣であると共にですか」
「そうした間柄でもありますな」
「確かに」
「共に義兄弟の間柄となったな」
 幸村は十人にこのことも告げた。
「そういうことじゃ」
「家臣であり友であり兄弟でもある」
「それが我等ですか」
「そうした意味で羽柴殿とは違うのじゃ」
 その主従がというのだ。
「だから拙者達はよい、しかしな」
「羽柴殿はそうはいかぬ」
「そこが、ですな」
「違う」
「そうなのですな」
「そこも弱みじゃ。譜代ならば多くはその家から離れぬ」
 その家に代々仕えている、まさに生死を共にする間柄だというのだ。
「羽柴殿、いや羽柴家にはまだそうした家臣がおられぬのじゃ」
「それが羽柴殿にどうなるか」
「羽柴殿の後は」
「それが問題ですか」
「拙者はそう思う」
 こう言うのだった。
「後継と譜代、一門のこと。それに」
「それに、ですか」
「まだありますか」
「羽柴殿の弱みは」
「ではその弱みは一体」
「何でしょうか」
「羽柴殿は何であられるか」 
 突き付けた様な言葉だった、秀吉自身のそのことを。
「あの方は」
「?と、いいますと」
「殿、それは一体」
「どういうことですか?」
「だからじゃ。羽柴殿はどうしてここまでなられた」
 幸村が十人に問うたのはこのことだった。
「百姓からな」
「はい、織田家に入ってです」
「一介の足軽からのし上がり」
「城持ちにまで取り立てられ」
「万を数える軍勢も任される様になり」
「今は」
「そこじゃ、羽柴殿は織田家の家臣であられた」
 幸村はこのことをだ、確かな声で話した。
「紛れもなくな」
「しかし今は、ですな」
「ご自身が天下を目指されていますな」
「実際に天下人になろうとされている」
「ということは」
「本来は織田家を盛り立てるものじゃ」
 織田家の家臣だからである、幸村は秀吉のそのことを言うのだ。
「清洲でのお話でもそうなっていた」
「織田家の主は三法師殿でしたな」
「二条城で倒れられた信忠殿のご嫡男の」
「あの方が信雄殿の後見の下主となられる」
「と、いうことはですな」
「三法師殿、そして後見の信雄殿の家臣でなければならぬ」
 それが筋だというのだ。
「天下人を目指すのではなくな」
「では羽柴殿は」
「簒奪、ですか」
「織田家を乗っ取った」
「そうした方ですか」
「殆どの者が言わぬがそうじゃ」
 まさに簒奪者だとだ、幸村は指摘したのだ。
「あの方は簒奪者、つまりな」
「そこにもですか」
「羽柴殿の弱みがあると」
「そのことにも」
「正統かどうかというとな」
 秀吉、ひいては羽柴家の
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ