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鶴の舞う空へ 
第1部 異世界へ
4.戦場へ
鶴の舞う空へ
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るのは源氏でも平家でもない。やはりここは異世界なのだと海斗は改めて感じた。海斗は異世界の人間であることを悟られないように、適当に相づちや返事を返しながらこの世界の情報を収集した。風早の話、ほかの五人将の話。頭が非常によく、軍師であり衛兵(薬師)である影光という青年、敵兵から鬼神と恐れられる勝左衛門(しょうざえもん)という少年、口数は少ないが腕は国一と言われる黒右衛門(くろえもん)という青年、そしてすべてを人並み以上にこなす長、風早。また先の戦で五人将が一人討ち死してしまい、次の戦で武功を上げた者が次の五人将になれるという話すらあるらしい。
 話を聞き終えた海斗は、ほかの男たちが剣を研ぐのを見よう見まねでまねをし、戦の準備に取りかかった。外はもう暗く、火が焚かれ始めていた。馬や荷物が多く集められている。明日の昼過ぎには出発し、明日の晩には目的地に陣を張り終え、明け方には出陣をするらしい。海斗はいままで味わったことのない、不思議な緊張感を肌で感じていた。
 次の日の昼、予定通り行軍は開始された。初めて鎧をまとった海斗は、剣道の防具と違う重みを感じながら歩いた。重い荷物は馬に乗せられ、荒れた道を歩き続けると、日は徐々に傾き始め、月が顔を出し始める頃行軍は終わった。兵たちが力を合わせ、陣を張り終えた頃、馬に乗った姫君と従者が到着した。
 屋敷にいたときより遙かに緊張感が漂っている。海斗も緊張を隠せない様子で、陣の外の木下で立ち尽くしていた。海斗は腰に下げた剣を見ながら、風早の言葉を一つ一つ思い出してかみしめていた。その一方で、命のやりとりをすることはわかっていたはずなのに、恐怖は感じていなかった。海斗は剣と月を見ながら、異世界に来てからの急な出来事を振り返り、それに順応しようとする冷静な自分を不思議に、また他人事のように考えていた。 
 月と別れを告げる頃、陣の前に兵が整列し始めた。海斗のいる風早の隊は前から二番目で、鶴姫は一つ後ろ、真ん中の影光と呼ばれる五人将の隊に加わっているようだった。そして、月と朝日が入れ替わる頃。
「よし、出陣だ!皆の者、すすめ!!」
と、前の方から男性の声がすると、ピーッと高い笛の音があたりに鳴り響いた。すると、おお!!っと鬨の(ときのこえ)を一斉に上げ走り出した。海斗も前の兵を追いかけるように走り出した。
 とうとう戦の火種が切られらのだ

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